「あら、行人さま」
「野菜を届けに来たんだけどさ、ちづるさんは居ないの?」

「さぁ?お母様もお姉さまも私に家事を押し付けて、すぐ居なくなるから」
「そうなんだ……大変だね」

「まぁいつものことですし、もう慣れっこですわ」
「あやねの打たれ強さのルーツって、やっぱりあの2人が起源なんだ……」

「立ち話も難ですから、お茶でも出しますのでお掛けになって」

お茶にお煎餅、それにお団子も出そうかしら?
これで会話が弾めば、少しくらい行人様に長居をして貰えるかな?

「へぇ〜そうなんだ、紋次郎君は何でも知ってるんだね」
『まあねっ!お姉ちゃんのことなら、何でも知ってるよっ!』

紋次郎も、すっかり行人様に懐いちゃって……
でも余計なことは言わないように、釘を刺しとかなきゃね。

「2人とも楽しそうね、何を話してたの?」

「大した話じゃないよ」
『そうだよ、オトコ同士の秘密の話』

「何よっ、秘密の話って!私のことかぁ〜!」

『秘密は秘密だよっ!ボクは遊んでくるから
お姉ちゃ〜ん、ガンバってねぇ〜』
「コラっ、紋次郎ぉ〜!!!逃げんなぁ〜!……何が頑張ってよ、まったくあの子は……」

でも紋次郎の粋な計らいで、私と行人様は2人っきり
帰って来たらご褒美に、栗ようかんでもあげるとしよう。

「それでね、その見知らぬ女が私のこと幼児体型とか言うんですのよ」

「それは失礼な話だね」

縁側に2人で座り、どうでも良いくだらない話をする。
傍目に見たら、ただの茶飲み友達
でもその実、2人の親密度は以前より深くなっている……はずよね?

以前の行人様なら2人っきりだと、なんか私を警戒してた。
でも今は自然体で笑いながら私に話し掛けて下さる。
それに私と行人様は……接吻をした仲なんだから、当然よねっ。

「まったくですわっ!」

しかし行人様はいったい、何人の娘と接吻したのかしら?
私が知ってるだけでも、すず・しのぶ……そして、よりによってお姉さま。
ホントに落ち着かない人よね……このドンカン唐変木!

「でもさ……綺麗になったよね、最近のあやね」

「エェェ〜っ!?……かっ、からかわないで下さい」

行人様は私のことを、そんな風に見てくれてるの?

普段は強がる私だけど……正直、考えてみなかった……。

「あやねって綺麗な髪してるよね」

褒めれるのって、慣れて無いから
そんな風に言われると……何か、こそばゆいな。

「……そうですか?」
「最近は益々艶が出てきてるし、横で見てると
偶にドキッとする時があるかな…」

……あれっ?
これって変じゃない?

照れ屋の行人様が、平然と褒め言葉を口にするなんて……らしくないわよね?

「何て言うのかなぁ……体の線とか、女の子らしくなって来たと言うか……
ちょっと大人っぽくなって来た感じかな?」

この饒舌な行人様は……偽物?幻十丸?

……それとも、お姉さまの新しい術?もしくは変装?

「行人さまぁ、ちょっと失礼します……フニュゥゥゥ〜!!!」
「痛だだだぁ〜!?」

うぅ〜ん……この肉感は本物みたいねぇ。

「あやねっ!急に何するんだよぉー!!!」

じゃあこの現象は、いったい何んなの?

「いやっ、行人様が何時に無く饒舌だったもので
……つい本物か確認してみました、てへっ♪」

「『てへっ♪』じゃないよっ!いきなり抓ることはないじゃないか、イテテテ…」

本物かぁ……それなら行人様は本心から話してくれてるの?
私のことを女の子として、ちゃんと見てくれてるって事で良いの?

それなら……私は行人様にとっての
特別な女の子と思っても、良いんですか?

「あの……行人様って、あまり褒め言葉を言ったりしないですよね?」
「そうかな?そんなこと無いよ、良いと思ったら素直に褒めたりするよ」

「でも私たちがオシャレをしても、こちらがせがむまで
何も言ってくれないじゃない?」

「それは……照れくさいから、かな?」

照れるから?……じゃあ何で、私に対しては平気で褒め言葉が言えんのよっ!!!

「ちょっと行人さまっ!一体どうゆうことよぉ〜!!!」

いくらポジティブな考え方の私でも、今の発言は受け入れられなぁ〜い!!!

「あやねっ!落ち着いて、一体なにが不満なの?」

「何がって……行人様にとって、私は何ですの?」
「僕にとっての、あやね?」

言ってしまったぁ……もう引き返せない。
これで単なる友人なんて言われたら、当分立ち直れないわ……。

でも!……これで私の立場がハッキリする。
きっと行人様は、私を特別な存在だと思ってくれているはず。

だって行人様に出会うまで、私の中に眠っていた恋心!乙女心が、そう言ってるんだもん!

「あやねは何でも話せる、友達かな?」

返せぇぇぇ!!!!
私のトキメキを返せぇ〜!
この鈍感!鈍チン!唐変木ぅ〜!!

「ハッ…ハハッ…ははは……友達って…」
「そう、あやねは友達!」

今までいろんな自爆して来た私だけど、これはキツイ……。

「話し易くて、何でも相談できる一番の友達」

「一番の……友達?」
「うん、悩みがあっても家族とかには相談し難い話しってあるでしょ?」

そっか……行人様にとって私は一応、特別な存在ではあるのか。

「まぁ、お姉様やお母様に言え無い悩みもあるかな…」

「でしょ?僕もすずには言えない悩みでも、あやねになら話せる事があるんだよ」

「そうなの?」
「まあ何でも相談できると言っても、限りは有るけどね」

「……そうなんだ」
「やっぱり家族には心配を掛けたくないじゃない?」

友達以上、家族未満?……まあ今は、それで良いじゃない?
少なくとも、お姉様たちより優位な立場に居ることには変わりないんだし。

みんなには悪いけど行人様争奪戦は、私が一歩リードしてるって所ね。

「ハァ〜……ホッとしたら、なんか一気に疲れたわぁ〜」

「何か1人で怒ったり落ち込んだり、やっぱりあやねを見てると飽きないよ」

「うるさいっ!!……まったく誰のせいで、こんなに疲れたと思ってのよ」

ホントに行人様って、鈍チンよねぇ……。
私の気を引く為に、ワザとやってるんじゃないかしら?

「それにしても、無駄にドキドキしちゃったから胸が熱つぅ〜い」

「はしたないよ、そんなに胸元をはだけたりしたら……」

「どうせ私のお乳は小さいですから
見えたって、気にならないでしょ!フンだっ!」

「そんなことは無いよ……とにかく胸元を閉じてっ!」

「ハイ、ハイっ!見苦しい小さな胸は、しまいますよぉ〜だっ!!」

「そんな風に自虐的にならなくても……
それに最近、あやねの胸って……少し大きくなったでしょ?」

「『少し』は余計よっ!!!」

ホントに行人様ったら、デリカシーが無いんだから……。

でも私の胸って、少しは膨らんだのかしら?
自分じゃ気づかなかったなぁ……。

それだけ行人様が私を見てるってことなの?……フッ…フフフッ…悪い気はしないわね。

「行人さまぁ〜」
「……何ですか?」

「私の胸ってぇ〜以前よりぃ〜膨らんだってぇ〜ホントですぅかぁ〜?」

「……そうだった、この人を褒めると、ロクでもない事になるんだった…」

「ねぇ〜どうなのぉ〜行人さまぁ〜?」

フッフッフッ!照れてる、照れてるぅ〜!
これがいつもちかげが言ってる、お年頃ってヤツなのかしらっ!

「ねぇ、ねぇ〜ってばぁ〜、ちゃんと教・え・てっ!」

ププププッ!何か楽しいぃ〜!!
私のお乳も捨てたもんじゃないわね。

「……大きく…なったんじゃない?
とっ、とにかくこの話はもうお終いっ!止めないと帰るよっ?」

「ちぇっ〜つまんなーい……じゃあ行人様、膝枕して?」
「何で唐突に膝枕?意味が分かんないんだけど?」

「理由なんて、どうでもイィのぉ〜!!」

偶には私だって、行人様と2人っきりで静かにマッタリしたいのよ。

「お姉様には出来て、私にはできないのっ!」
「あの時は……まちが風邪を引いて弱ってから…」

「もぉ〜!!つべこべ言わないで、サッサとする!」
「もう、強引だなぁ……はい、コレで良い?」

「うむ」

春の風を感じながら、縁側で行人様の膝枕……最高だわぁ〜。

「何だか眠くなっちゃうなぁ……」

足を真っ直ぐに伸ばして、障子を背もたれ代わりする行人様。
太ももに頭を乗せると少し堅い……結構、筋肉質なのね。

「本当に寝ないでよ?」

ダメだ……目をつぶると本当に寝ちゃいそう。

「あやね……ちょっと聞きたいことが有るんだけど、良いかな?」

「……なぁ〜に?」
「もし、藍蘭島に僕以外の異性が居ても……
あやねは、僕に好意を持ってくれたのかな?」

ハァっ?……今更なにを聞いてのよ、この人は?
こんなに鈍いっのって、罪じゃない?

ちょっとイジワルしちゃおっ!

「さぁ?……その時にならないと分かんないわ」
「……そうだよね」

ちょっと、酷だったかしら?
でも私たちは、いつもそんな想いをしてるんだから
偶には行人様にも、同じ想いをして貰いたいわ……。
でも今の言葉を聞いて行人様は、どんな風に思ったのかしら?

「ヘヘッ……ヤッパリネ…ワカッテタンダヨ……ボクナンテ」

「のわぁ〜っ!?ちょっと、行人さまっ!!!!」

私のスペシャルな笑顔で『ウ・ソ・よっ!』って、慰めようと見上げたら
薄ら笑いを浮かべる行人様は、魂が半分抜けちゃってるぅ〜!

「行人さまぁ〜!!戻って来てぇ〜!」

冗談じゃないわよっ!!!
自分の好きな人を殺してどうすんのよ、ワタシィ〜!
お姉様じゃないんだから、魂なんて自由に扱えないっうの!

「嘘でも良いから……そんなこと無いって……言って貰いたかったなぁ…ヘヘヘッ…ヘヘ…」

「ウソです!嘘っ!」
「へっ?……嘘なの?」

「嘘に決まってるじゃない……好きでも無い人に
膝枕なんて頼むわけ無いでしょ?……この鈍チン!」
「確かにそうですよね……ゴメン」

良かったぁ……殺さずに済んだわ……しかし行人様って、結構打たれ弱いのね?

でも、そんな所がカワイィ〜!
以前お姉様が言ってた、カワイイ子ほどイジメたくなるって気持ちが
今ならちょっぴり分かる気がするわ。

「もう、ホントに人騒がせなんだから……よいしょ!」
「えぇぇっ!?また膝枕?」

「当然です!人がせっかく、のんびりしてたのに」
「ねぇ、あやね……やっぱり僕って鈍いのかな?」

「何を今更……」
「でもね、今みたいに女の子と2人っきりだと
ドキドキ緊張はするんだよ」

「行人様……そこは『女の子』じゃなくて『あやね』と2人っきりだと、でしょ?」
「度々スミマセン」

この人は鈍いんだか何だか、もう分かんないや……。
でも行人様も、私にドキドキしてくれるんだ……ちょっと得した気分だな。

「なんかさ……こんな風に2人で居ると、照れくさいね」

またこの人は、今更なことを……。
私なんか接吻した後は、行人様の顔すらまともに見れなかったんだから……。

でも今の行人様って、あの時の私と一緒の気持ちなのかな?
いま私の顔を見たら、あの時の私みたいに真っ直ぐ目を見ることも出来ないの?

「ねぇ、行人さ……ま?」
「へっ?」

「……いったい私のドコを見て、ドキドキしてますの?」
「ごっ!?ゴメンっ!イヤらしい気持ちで見てたんじゃないんだっ!」

「別に謝る必要はないんですけど…」
「あのっ、本当にあやねの胸って
成長してるんだなぁと……つい見てしまいました」

さっきから私の胸ばっかり気にしちゃって、変な行人様?

「そんなに気になるなら見ます?それとも触ります?」
「エェッ?!……本当に良いの?」

「えぇ、かまいませんけど?」
「触ったら、結婚しろとか言わない?」

「流石に私でも、胸を触ったらくらいで結婚しろなんて言いませんよぉ〜」
「ホントに?」

しつこいなぁ……何をそんなに躊躇しているんだろ?

「もぉ〜!そんなに私の言葉が信じられませんの?」
「そうゆう事は無いんだけど……やっぱり、ねぇ?」

「ハァ〜?もうイライラするわねぇ〜!!!」
「何をするつもり?」

「私が行人様の膝に座りますから、よいしょっと!……行人様は腕を前に伸ばすぅ!」
「えぇぇっ!?」

「壊れ物じゃ無いんだから、もっと強く触っても良いですのよ?」

加減が分からないのかしら?
優しくしてくれるのは嬉しいんだけど、そんなちょっと触れるくらいじゃ
私のお乳が大きくなってるか分かんないじゃない。

「ちょっとあやね!!上から手を押さえつけないでぇ!」

「どうです、行人様?私の胸は大きくなってますか?」
「そんなの分かんないよ!……あやねの胸、初めて触るんだから」

「あっ!!そうか……比べようが無いか」
「でも……あやねの胸って、見た目より大きいよね」

大きく手を広げ、指で包み込むように胸を揉みながら行人様から放たれた言葉。
『あやねの胸って大きいねっ!』
胸の大きさを気にしている私にとって………最高の褒め言葉だわっ!!!

「あやねって……着痩せするタイプなんだ…」

「なっ!?何を言ってるの、当然のことじゃないっ!
行人様もようやく、私の秘められた魅力を理解したみたいねぇ〜オホッ!オホッ!オホホホ〜!!」

もう行人様ったら、夢中で私の胸を弄っちゃってぇ〜
そんなに私のお乳が気に入っちゃったのかしら?
心なしか……呼吸も激しくなって来たような?

「……ねぇ、あやね」
「ハイっ!?」

「服の中に手を入れても良い?」

私は別にかまわないけど……なんか素直に触らせるは勿体無いような?

だって行人様から求められるなんて、千載一遇のチャンスってヤツなんだから
このチャンスを上手く利用できないかなぁ……?

「……ダメ?」
「ちょっとだけ待って下さいね、行人様」

何かないかなぁ……私が得するようなこと?

「アレっ?……ちょっと行人さまっ!!!手が入ってるぅ!直接お乳を触ってるぅ〜!!」
「ゴメン、もう我慢できなきなくて」

「へっ!?ちょっと何をする気ですの、行人様!」
「向きを変えるだけだから」

「えっ!?えっ!?えぇぇ〜っ!?」

預けていたはずの背中は左腕に抱かれ、いつの間にか私は
行人様の胸の中にスッポリと納められていた。

びっくりしたけど……正直、悪くない……寧ろ至福の時?

「ゴメン、あやね……何か無理やりみたいになっちゃって」

「別に良いんですけど……」
「けど、何?」

いや流石に直接触られると、くすぐったいような……ムズ痒いような?
特に先の方を触られると……。

「あの、行人様……あんまり先の方ばっかり弄らないで貰えますか?」
「あやねはココが弱いの?」

「……みたいです、みゃん!?」
「あやねって、かわいいなぁ……」

ダメだぁ〜!!!私って、こんなに乳首が弱かったのか…。
だんだん頭の中も、ぽぉ〜してきたし……体に力も入らない………。
でも…こんなの……私らしくなぁ〜いっ!

完全無欠の美少女あやね様は、決して弱みを見せず!
島で唯一の男を手玉に取って
みんなに羨望の眼差しを向けられるようじゃなきゃダメなのよ!

そのためには、なんとか流れを私の方に引き寄せて
主導権を私の手に握らなくちゃ!

「ってえぇぇぇ〜行人様っ!!!何で着物の中に顔を突っ込んでるのぉ〜!」
「こうする為、かな?……チュッ!」

「くうぅ〜……ぁん!…ちくびはダメぇ〜!!!くすぐったいってばぁ〜!!!」

流れを戻すどころか、このままじゃ私がどっかに流されちゃいそう……。
胸を強く吸われる度に頭の中が一瞬、真っ白く輝いて見える……このままじゃ、私。

「うぅぅ〜っ……ストォ〜プっ!!!行人さまっ、待てです!待てぇ〜っ!」
「チュパッ……何?」

「ハァ…ハァ…ハァ……ココは外っ!縁側です!」
「ゴメン!?つい夢中になって……スミマセンでした」

「……それでも着物の中から、手を抜いて下さらないんですね」
「何か、名残惜しくて……つい」

ふぅ〜、危うく見知らぬ世界へ連れて行かれそうになったわ……。
でも行人様の心はガッチリ掴めたみたいだなぁ……怪我の功名ってヤツ?

「あやねって、強引なのはキライ?」

「へっ?まぁ……できれば優しくして貰った方が」
「そうなんだ……やっぱり姉妹でも、趣味や趣向は違うんだねぇ…」

「ソレ、どうゆう意味?」
「イヤっ!?そのっ!……前に、まちを押し倒しちゃった時
強引なのが好きって言ってたのを思いだして…」

「何よ、それ!聞いてないわよっ!」

あの行き遅れめぇ〜!いつの間にそんな事を……。

これはもう決定な既成事実を作って、私から行人様が
離れられないように、楔を打ち込むしかないな……。

「行人様は、そんなに私の体がお気に召しまして?」
「まあ……その……大変よろしいかと」

「そうなんですか……」

だったら私に残された手段は、コレしかないっ!

「それなら、あの時の続きをしましょうよぉ〜」
「あの時って……まさか、キスした時のこと?」

「そのとぉ〜り!」

あの時は初めての接吻に、頭の中がグチャグチャになっちゃって
気がついたら逃げ出しちゃってたからなぁ。
次の日に行人様が何でも言うこと聞く、って言って下さった時も
またテンパっちゃって、勿体無いことしちゃったし。

今こそ!!!
あの時の言葉通りに、私の望みを叶えて貰う最大の……チャ〜ンス!

「あやね……僕的には嬉しいんだけど、意味分かって言ってるの?」

「もちろんですわ」
「いや、絶対に分かってないでしょ……だって、あの時も
何をすれば良いのか、分かってなかったじゃん」

やっぱり知っているんだ、行人様は婚前交渉が何たるかを。
胸をはだけて行人様に跨ったあの時、私が何をすれば良かったのかって。

だったら、話は早いわ。

「だ・か・らっ!それを今から行人様に
手取り足取り教えて貰うんじゃなぁ〜い」

「えぇぇっ?!……でも、そればっかりはねぇ……
僕の責任問題もあるし…」

責任問題?
やっぱり婚前交渉をしちゃうと、子供ができるのかしら?
それならそれで、私には好都合なんだけどなぁ…………そうだ!!

「マネゴトですよ」
「まね?」

「そう真似事、いつか迎える日への予行演習ですわ」

ふっふっふっ……やり方さえ分かれば
たとえ行人様が嫌がっても、後で強引にできちゃうし。

そうなれば行人様と私の間には、愛のカスガイが打ち込まれ……ムフッ…フフフッ……
あやねちゃんって、賢い!

「どうです、行人様?」
「僕も……健康な男だから、興味ない訳じゃないんだけど……」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですってぇ〜、真似事なんですから」

「真似事ねぇ………中に出さなきゃ、大丈夫…かな?」

「へっ?何か言いましたか?」
「何でもないっ!……本当に良いんだね?」

「ハイっ!」
「それじゃ、あやねの部屋に行こうか……ヨイショ!」

「うわっ!?」

掛け声と共に、軽々と私を胸に抱いたまま立ち上がり
廊下を歩き始めた行人様。
見かけはそんなに強そうじゃないけど、やっぱり強いんだなぁ……行人様って。

普段は優しい人なのに、いざなれば得意の剣術で島のヌシ様4人から
一本取っちゃうんだもん、素敵よ。

夢見心地って、今みたいな瞬間を言うんだろうな……。

部屋に入ると直ぐに着物の襟は広げられ、あられもない姿にされちゃった……。

「……僕は好きだよ…あやねのニオイ」

露わになった首筋から肩口へ執拗に口づけをされ
片方だけが剥き出しにされた胸は
覆い被さる手の中で様々な形に変えられる。

何かペースが狂っちゃうな……こんなに行人様が積極的になるなんて。

「行人様って……ホントに初めてなの?……何か、怪しいな…」

気恥ずかしさを誤魔化すように話し掛けても、応えては返って来ない。
正確には私の声が聞こえ無いみたいだわ……嬉しいような、少し寂しいような…。

でも私の視界から徐々に行人様が消えてゆくに連れて、私も周りが見えなくなる。
さっきまで聞こえていた鳥の鳴き声や
自身が発していた吐息も、時折聞こえなくなる……。

「むぅ〜……やだ……いゃん!」

特に袴の脇から手が滑り込み、内股を撫でられると
下着の中がムズムズして、その部分だけに意識が集中してしまう。

「アッ!……ソコっ…そこ、触って欲しいの……」
「……ココで良いの?」

ようやく下着の中に手が届き、優しい指先がムズ痒さの震源を刺激してくれた。

「うぅ〜っ!?……そう…そこが、さっきからムズ痒いの……」

普段は下着の中で身を寄せ合い、決して露わになることの無い部分が
大胆さを増す指先に解放され、私に心地よい刺激を与えてくれる………って、あれっ?
下着?……下着の中をぉお〜!!!!

「ストォ〜ップ!!!行人さまストップ!ドコを触ってますのっ!!!」
「気持ち、イイでしょ?」

「止めてっ!お願いだからどいてっ!」
「大丈夫だって、怖くないからね」

行人さまのバカァ〜!!!
確かに気持ちいいのよ、体が勝手に震えるくらい気持ちいいの……。

「でも触っちゃダメぇぇぇ〜!キ−タ−ナァーイィィー!!!」

声は確実に耳へ届いているはずなのに
私の中に深く入り込んだ指先は、動きを止めてくれない。

そんな所を弄くられたら…………ヤバっ!…ナンカ……モ・ヨ・オ・シ・テ・キ・タ?

「ウゥゥ……ゥオリャ〜!!!」
「うわっ!?」

「ドケって言ってんのが聞こえんのかぁぁぁ!!!!!」

ヤバイ、ヤバァ〜イ!!!
もうチビっちゃいそぉ〜!

「ちょっと、ドコに行くのっ!?あやねぇ〜!」

走る、走る、私は全力で走る、目指すは厠!

「行人さまの、バカァ〜!!」

家中にコダマした私の叫び声が消える頃、ようやく無事に目的地の到着
厠の扉がバタン!と勢い良く閉められた。

袴の裾を勢いよく捲り、一気に下着を下ろすと何故かお尻がひんやり?

「なによ……コレ?」

生理現象を忘れさせるくらい驚かせたのは、私自身の身体だった。

初めて感じる違和感に、中腰のまま覗き込むと
私と下着の間には、透明の糸が引いている…………私…病気なの?

「……うそ…なによ、コレ…」

もう用を足す気もしない……とにかく今は綺麗にしないと。

でも透明でヌルヌルした液体が、拭いても拭いても
どこからか湧き出して来る……もう、何なのよ。

「……はぁ……どうしよう」

切りのない作業に見切りをつけ、洗濯して庭に干されていた袴に着替える。

とりあえず汚れた下着は巫女服の袖へ隠し、部屋へと戻る。
廊下を歩きながら現在の不安よりも、今後のことに考えを巡らせた。

「こんなことを相談できるのは、お母様かなぁ……」

でも話している所をお姉様に聞かれたら
何の実験をされるか、分かったもんじゃないし……。
やっぱり病気のことならオババか、みちるかなぁ…。

「ゴメン、あやねっ!!!」
「うわぁ!?」

下着を替えに部屋へ戻り、襖を引くと突然の声にびっくり!

そうだった、居たんだ……こんな時に限って、私の想い人が。

「下着、汚しちゃったでしょ?」

「えっ!!……なんで行人様が知ってるの?
……あっ、そっか……触ってたら分かっちゃいますよね……」

「本当に、ごめん……デリカシーに欠けることをして」

「行人様は気にしないで…」

「下着を脱がしてからが良かったよね、僕も初めてだからさ
段取りと言うか……手順がよく分からなくて」

「んんっ?……ちょっと待って」

なんか行人様の話し方って、私の下着がネバネバになることを最初から分かってたような?

「あの、行人様……私の病気のこと……最初からご存知だったの?」
「えっ?あやね、どこか悪いの?」

「だって……あんな所がネバネバになるなんて……
私は病気なんでしょ?」
「違う、違うよっ!あれは……生理現象と言うか……生体反応?」

生体反応か………って、何よソレ?

「とりあえず私は、病気じゃないの?」
「うん、病気では無いと思うよ……寧ろ健康なんじゃない?」

「良かったぁ……病気じゃないんだ……なんか、一気に疲れちゃったわよ……」
「大丈夫、あやね?」

畳の上にへたり込むと、行人様が直ぐに肩を支えてくれる。
今は少しでも、疲れた体と心に癒やしが欲しい
また暫く行人様の胸を借りることにしよう……。

「……ねぇ行人さま、あのネバネバって何ですの?」

言葉で聞く安心と、人肌を感じる安心がもっともっと欲しくて
座り直した行人様に私は潜り込む。

腰に腕を回して胸に耳を当てれば、トクン!トクン!と
一定のリズムを刻む心臓の音が、何故か心地よく感じる。

「あれは……あやねの体が、僕を受け入れる為の準備かな?」

「準備?……体が勝手に?」
「そう、誰でもあんな風になるん……だよね?僕も詳しくは知らないけど」

ほぇ〜本人に知識が無くても、体が勝手に準備しちゃうんだぁ……。
人間って便利に出来てるのねぇ。

「……僕の体も、準備状態になってるし」

そうなんだ……。

でも何だかんだ言っても、行人様って異性の体に詳しいな……ホントに初めてなのかしら?
島では初めて、ってオチじゃないでしょうね?

「行人さまぁ〜結構、女体について
お詳しいみたいですけど……どこで習ったの?」
「えっ!?……学校とか」

「とか?……後は何ですの、隠さず正直に仰って下さい」
「本を見たり…DVDとか、かな?」

「でぃぶぃでぃって、誰よっ!」

「DVDは人間じゃないよー!!……資料みたいな、物だよ…」

ふぅ〜ん……信じちゃっても良いのかしら?
まぁ昔の女だったとしても、今は関係ないか……。
だって現時点で、行人様が胸に抱いてる女は……ワ・タ・シなんだからっ!

「あやね、これからどうしようか?」
「う〜ん……私はこのまま行人様の胸に抱かれて、のんびりしたいですわ」
「……そっか」

「ははぁ〜ん……さっきの続きがしたいんでしょ?」
「うん……でもあやねが嫌なら我慢するよ」

「ガマンするなんて必要ありませんわ」
「良いの?でも、がっついてるみたいで嫌じゃない?」

「そんなことはありません……殿方に求められる事こそ、女の喜びですから……
さぁ〜私を好きにして、行人様っ!」

とは、言ってみたものの……何で一直線に袴の中へ手を入れるの、行人様?
私、いま下着を履いてないですけど…。

「巫女服、脱がしても良い?」
「へっ?……あぁ、良いですよ」

何か、あっという間に裸にされちゃったなぁ……まぁ別に良いんだけど。

「カワイイなぁ……あやねのお尻って」

「そっ!?そうですか?」

何故か今までは感じなかった、気恥ずかしいとゆう想いが
ジワジワと湧いて来るような?
行人様に肌を晒すのは、初めてじゃないのに……。

ダメ……また弱気になっちゃダメよ、さっき誓ったじゃない!
優柔不断な行人様の性格を考えたら
主導権は、私の手にガッチリ掴んでおかないと!

「やぁん!ソコばっかり触らないでぇ〜」

私には無理っぽいなぁ……。
何か膝の上に抱かれてから、もうワケ分かんないくらい
好き勝手に体を弄られてるし……。

それなら、私の中に一つだけ残っている
最後の疑問を聞いて、不安を解消しとこうかな。

その後は行人様に身も心も委ね、全てをお任せしよう。

「あのっ、行人様」
「なに?」

「最終的には……私は、どうなりますの?」
「えっと、それは……あやねのココと」

「やぁん!?」
「僕が繋がると言うか…」

「はぁっ?繋がる?……何が?どんな風に?」
「どんな風って……僕の男性器が、あやねの中に入って…」

「えぇぇぇ〜っ!!!」

こんな所に行人様の何かが入って大丈夫なのぉ!?
もの凄く不安になるんですけど………あっ!でも、月のモノもココよね?

アレが始まった時にお母様は、おめでとうと言って
私が赤ちゃんを産める大人の体になったって、お祝いしてくれたっけ。

そう考えると、行人様の説明も納得できるような?

「だから少し痛いかもしれない」

「えっ?……痛いんですか?」
「うん、初めてだし……やっぱり止めとく?」

「とんでもない!!!」

そうよ、迷ってる場合なんかじゃないわ!
こんなチャンスは、二度と巡って来ないかもしれないんだから。
一度試してみれば、どんな感じなのか全て分かるんだし……。

何より、私は無敵のあやね様よ!
痛みには強いんだから、平気よね……多分?

「早速で悪いけど、もう我慢できないから始めるよ?」
「ハイっ、どうぞ!」

行人様ったら、最初はマネするだけって言ってたはずなのに
もうガマンできないなんて言っちゃって……もう私にメロメロなんじゃない?

なんか行人様の顔を見たら安心しちゃった、後は全部任せちゃおっと。

「できるだけ優しくするから、無理そうなら言ってね?」
「はぁ〜い」

そんなこと言わなくても分かってますわ、行人様がどれだけ優しい人かなんて。
現に今だって、優しく私を畳に寝かせてくれたじゃない。

「行人さま……始める前に口づけをしましょ」

一つになるとは良く言ったものだわ……。
重ねた唇と体から伝わる体温が2人を溶かして、もうどちらの手や足かも分からない。

今から行人様が、私の中に入って来るのか……。

「……始めるよ」

「はい……お願いします」

この感じだと、行人様の股から触覚的な何かが伸びて私の中へ入って来るのかしら?
ホントに殿方の体って不思議よねぇ……。

まぁその謎も、間もなく解明されるんだけどね……
フフッ…フフッ…フフフッ……今日のことを知ったら、みんな悔しがるだろうなぁ……クククッ!

ごめんなさいね、お姉さまぁ〜
今からあやねは、行人様の子を身ごもっちゃいますぅ〜!

「痛っだぁぁぁー!!!!!」

なんじゃコリャー!!!

なに?何なの?この耐え難い痛みは?
こんな痛みは初めてよ……お姉様のイタズラなんて比にならない……。

耐えきれない……私にはムリっ!こんな痛いのガマンできない……。

「ゴメン!!……焦り過ぎたかな?」

「ヒィィィ〜!?そっ、それは何?」
「はぁ?どうしたの?何をそんなに怖がってるの?」

何でって、その股から飛び出してるバケモノは何なの?
そんなでっかくて凶悪そうな物を、行人様は私の中に入れようとしてたの?

「ゴメン、そんなに痛かった?」

「こっ、来ないで!!」
「へっ?」

前にお風呂へ忍び込んだ時は
行人様にそんな物は、付いて無かった………アンタ、誰よ!!

……こわい……怖いよ……アナタは誰なの?
私は……いったい誰の子を授かろうとしてたの?

「……たっ…助けて……助けて、お姉さまぁ〜ぁ〜!!」

「ちょっと、あやね!?外に出ちゃダメ!服、服を着なくちゃ!
……裸のままで飛び出してっちゃったよ…」

まいったなぁ……さすがあやねと言うべきか。
奇想天外、トラブルメーカー、本当に一筋縄ではいかない女の子だよ。

でもそんなあやねに惹かれる僕も、変わった人間に分類されるんだろうな……。

「っと!関心してる場合じゃない、早く追いかけないと
大変な騒ぎになっちゃうよ、もんじろー!」

ズバァーン!『呼んだ?』

「やっぱり居てくれたんだ、助かったよ」

『どうしたの?』
「あやねが飛び出しちゃってさ、君の足なら直ぐに追いつけると思って」

『任せて!早く背中に乗んなよ』
「頼んだよ、紋次郎」

◇◆◇◆◇

「……やっちゃったわ」

どうすんのよ、ワタシ!
裸に足袋だけなんて、こんな格好を誰かに見られたら
どんな言い逃れも出来ないじゃない!

「あやね〜」
『お姉ちゃ〜ん』

「あの声……行人様と紋次郎?……私を探しに来てくれたんだ!」

「あやね〜、返事して〜」

でもどうしよう……。
いま迎えに来てくれてるは、本物の行人様なの?
またあの魔物をぶら下げた、恐ろしい行人様だったら……。

『あっ、居たよ』
「のわぁ!?」

「でかした紋次郎君!……とりあえず服を着ようか、あやね」

少し恥ずかしそうに目をそらし、着物を差し出すこの仕草……。
この行人様は私の知っている、本物の行人様で間違いないよね?

「あなた……行人様よね?」
「へっ?……あぁ、僕は行人だけど……あやね、大丈夫?頭でもぶつけた?」

「…うっ……うわぁ〜ん、いぐどざまぁ〜!」
「ちょっ、あやね!?服を着て!服!」

「わたしコワかったんですよ、スッゴイ怖かったんだからぁ〜」

胸に受け止めて貰うと、包み込むように背中へ着物を掛けられる。
そして木陰に入り、宝物を隠すように抱いて貰うと凄く安心できた。

この感じ……それにこのニオイ……やっぱりさっきのも
本物の行人様で間違いないみたい……だったら、私は言いたいことがある。

「……行人様」
「なに?」

「私に入って来ようとしてた、アノ凶暴そうな物体は何?誰なの?」
「誰って……アレは僕の一部だよ」

「でも前に見た時は、小さくてかわいらしい
フニャフニャしたのが付いてたじゃない?」

「小さいって……大体いつ、僕の裸なんて見たんだよ?」

「お風呂場」
「あぁ……あやねが風呂に珍入して来た時ね……
そうか……そんなにマジマジと見られてたんだ……」

私に裸を見られたのが、そんなに嫌だったのかしら?
何か、腹立たしいわね……さっきまで、あんなに私の体を
好き勝手に弄くりまわしてたクセに……。

「行人様」
「……はい」

「正体を確かめるから、ズボンを脱いでさっきのを見せてっ!」
「嫌だよ!!突然なに言ってんだよ…」

「じゃあ説明してよ、何で以前と違う物が付いてたの?」
「アレは……あぁゆう場面になると、自然に大きくなっちゃうんだよ…」

「ふぅ〜ん」
「それに……狭い所に入るんだから、固い方が入り易いでしょ?」

「……そうなんだ」
「ちゃんと僕の話を聞いてる?……って!?勝手に見るなー!!!!」

ふむふむ……確かにお風呂場で見た時より、少し腫れてて大きくなってるなぁ……。

「ふぅ〜!ふぅ〜!」
「コラっ!息をかけちゃダメだってぇ〜!!!」

オォォ〜!!段々と膨らんで来たぁ〜!

「ダメだって、ズボンから手を離して!あと絶対に触るなぁー!!!」

絶対に触るな?

フフフッ……そんな風に言われたら、触りたくなるのが
人の性ってヤツじゃないかしら?

「そんなに照れなくてもイイからぁ〜ん」
「触ったらっ!!!……また大きくなるぞ…」

「へっ?」
「大きくなったら、またあやねの中に入るからな……今度は根元まで」

「ごっ!?ゴメンナサイ!!もう見たり触ったりしませんよぉ〜
少し落ち着きましょうね、行人さまっ!」

危なかった……あんな痛い痛い目に遭うのは二度と御免よ。

でもなぁ……アノ太いのが入らないと
行人様との間に既成事実は作れないのよね?
難儀なことだわ……正直もう痛いのは嫌だし、かと言って
このチャンスを逃すのは勿体無い……。

「あの、だったら……小さいままで、私の中に来ませんか?
大きいのは……ちょっと無理っぽいので…」

「気持ちは分かるけど……それは無理」

「でも大っきいままだと、メチャクチャ痛いんですのよ!」

そもそも幸せになるはずの儀式なのに
なんでこんなに悩んだり、痛い思いをしなければならないのよ?
愛する男女が一つになれば、幸せになれるって話は嘘なの?

「ゴメンね、さっきのは僕のやり方が悪かったんだと思う」

……やっぱり私たちって、根本的に何か間違ってるんじゃない?

そうよ絶対にやり方を間違えてるのよ。
常識的に考えて、あんな大きいのが入るわけが無いんだし
行人様も知らない、何か特別な方法があるに違いないわ。

「行人様……私たちには知識が足りないと思うの」
「…はぁ」

「正しい知識が有れば、絶対にあんな痛いはずがないっ!」
「いや、初めてなんだかさぁ……」

「いいえ、そんなはずはありません!…っとゆうことで
私たちの未来の為にも、2人で正しい知識を身に付けましょう」
「どうやって?」

「本よ、本!ちかげの家に行けば、きっと詳しく書いてある本が有るはずよ」

「まぁ有るには、有るだろけど……」

「それでは早速、ちかげの家に向かいましょう!」
「今日は止めておこうよ、もう夕方だし」

そっか、もうそんな時間か……。
急いてはことを仕損じるって言葉も有るし、今日の所はこれにて終了ね。
あんまり遅くまで行人様を連れ回したら
すずが探しに来て、確実に面倒なことになるだろうし。

「それもそうですわね……それじゃ行人様、明日のご予定は?」
「明日は仕事を手伝いに行くって、もう約束しちゃってるんだ」

「そうですか……じゃあ明日は、私が1人で調べておきますね」
「なんか凄い情熱だね?」

「それは私と行人様の未来の為ですもの、当然じゃない?」

結局は、こうなるのか……。

「……2人の未来って」
「何かご不満でも?」

僕は見事に、あやねのハニートラップに引っ掛かってしまったってことか……。

「別に無いよ」

「当然ねっ!」


しかし何でだろう?
密かにあやねのことを美少女と思っている僕なのに、何故か素直に喜べないんだよなぁ…。