「ふぅ、ふぅ…ついに、ついに手に入れましたの…」
日が沈み、夜が深けていく中、眼鏡を光らせて笑うちかげの手には藁人形があった。
「これで呪術についての研究が出来ますの。粘った甲斐がありました…」
ちかげはそう言うと藁人形を高く掲げた。

それはその日の夕方の事だった。
ちかげはまちの呪術を研究する事を諦めきれず、海龍神社に来ていた。
「まちさん、お願いですから呪術を研究させて欲しいんですの」
「もういいじゃない。十分身に染みたでしょ」
「ですから体をはった芸風は…」
「えい」
「ひきゃぁぁぁぁぁぁ!」
まちが藁人形に釘を刺すのと同時にちかげは胸に手を当てて悲鳴をあげる。
「ま、まちさん、お願いですから…」
「しつこいわね、あなたも…しょうがないわね、いいわよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ………えっと確か…あ、あった、これこれ」
まちは一つの藁人形を取り出すと、それをちかげに渡した。
「はい」
「え?これは…」
「素人でも呪える藁人形よ。呪いたい人間の髪の毛を一本、その藁人形に入れるの。
 そうするとその髪の毛の人間を呪う事が出来るわ」
「呪うと言うと…やはりこの藁人形に何かしたらその人にも?」
「ええ。ただし使えるのは1回だけで効果は長くて半日ね。
 言っておくけどもう一つ欲しいって言ってももうあげないわよ。それ作るのすごい面倒だから」
「分かりましたの。でも何で面倒なのにこんな物を…」
ちかげがそう聞くと、まちは煎餅を一口食べて答えた。
「この間暇が出来たから」
「そ、そうですか…と、とにかくありがとうございますの〜!」
ちかげはそう言って藁人形を持って意気揚々と海流神社を後にした。

「フフフフ…さ〜て、誰を実験台に使いましょうかね…」
ちかげは藁人形を弄りながら、さらに怪しく笑う。
「ここはやはり行人さんを…フフフ、あんな事やこんな事をさせて…」
ちかげは誰を呪い、どんな事をしようか考えていたが、しばらくすると睡魔に負けて眠ってしまった。

翌朝、ぱな子はちかげを起こすため、ちかげの部屋にやってきた。
(ほら、ちかげさん、朝ですよ。起きてください)
「ん、朝?」
ちかげは机に突っ伏す形で寝ており、ぱな子はちかげの肩を揺らしていた。
(こんな所で寝て…早くしないと朝ご飯冷めちゃいますよ)
「んぅ…ん?」
ちかげは体を起こすと、何かあったのか頭をさすり始めた。
(どうしました?)
「あ、いえ、何かが髪の毛に引っかかっていたみたいで…」
(とにかく早く来てください。あとはちかげさんだけなんですか)
「は〜い、ですの…」
そう返事をすると、ちかげは欠伸をしながら立ち上がった。
ぱな子は部屋から出ようとすると、何かを思いだしたかのようにちかげに言った。
(あ、それとこの部屋、ずいぶん散らかってるみたいですけど…)
「う…」
(あとでちゃんと片付けてくださいね)
ぱな子はそう言うとちかげの部屋から出ていった。
「ふわぁぁ…」
ちかげは再び欠伸をすると、机の上にある藁人形を見た。
そして眼鏡をくいっと上げ、また怪しく笑い始めた。
「フフ、とりあえず呪うのは行人さんにしましょう…そうと決まればご飯を食べた後、早速行人さんの髪の毛を…」
ちかげは怪しい笑みを浮かべたまま部屋を出ていった。
そしてちかげが部屋を出ていった後、藁人形が微かに光り、先ほど引っかかったちかげの髪の毛を取り込んだ。

日もある程度昇った頃、行人は縁側でお茶をすすっていた。
「ふぅ、たまにはこうやってのんびりするのもいいなぁ…」
「すいませーん、行人さん、いますかー?」
「ん、あの声は…ちかげさん?」
行人は湯飲みを置くと、声がした方、玄関に向かって歩いていった。
するとそこにはちかげが立っており、ちかげは行人に気づいたようで彼の方に顔を向けた。
「あ、行人さん」
「やっぱりちかげさんか。どうしたんですか?」
「今日はちょっとすずちゃんの事で話が…」
「え?すずならいませんよ。今とんかつと一緒に神社に行ってて…」
「いえ…すずちゃんがいない方が好都合ですの」
ちかげのその言葉に行人は首を傾げる。
「えっと…どういう事ですか?」
「すずちゃんの勉強嫌いを直す計画を思いつきまして…」
「ああ、なるほどね…」
行人は納得したように苦笑した。
「ただ計画と言ってもまだちゃんと出来ていないんですの。そこで行人さんとその計画について話そうと思いまして」
「僕と、ですか…ふ〜む…」
行人は腕を組むと、目を瞑ってすずの事を頭に浮かべた。
(すずの勉強嫌いを直す計画か…すずも少しはやる気が出てるし、いいかもしれないな…)
行人は腕を解くと、ちかげの方に顔を向けた。
「いいですよ。僕も協力します」
「本当ですか?助かりますの」
「とりあえず立ち話もなんですから中に入ってください。お茶も用意しますから」
行人はそう言って玄関の戸を開き、家の中に入っていった。
ちかげはその様子を見ながら、怪しい笑みを浮かべた。
「それじゃあ…お邪魔しますの」
そう言ってちかげは行人に続き、家の中に入っていった。

「それでですね、すずちゃんが満点だったら豆大福を、そうでなければありとあらゆる香辛料を入れた豆大福をですね…」
「けどそれってハードル高い上に下手をすればすずの勉強嫌いがひどくなるんじゃ…」
「大丈夫ですの。これ以上嫌いになれないくらい勉強嫌いになったら、後は好きになるしかありませんの」
「いや、その考えは絶対ダメですって…」
行人が困ったようにそう言うと、ちかげは眼鏡を光らせる。
(さて、そろそろ本来の目的…行人さんの髪の毛を…)
するとちかげは何かに気づいたようなふりをして、行人の顔に手を伸ばし、彼に近づく。
行人はちかげの急な行動に少し戸惑ったような表情を見せる。
「ち、ちかげさん?」
「頭にゴミがついてますの。少しじっとしててください」
「は、はい…」
行人がちかげに言われた通りにじっと動かずにいると、ちかげは行人の髪の毛を一本摘んだ。
そしてそのままちかげは髪の毛を引っ張り、それを抜いた。
「つっ!」
「あ、すいませんですの。髪の毛も一緒になって…」
「ああ、いや、大丈夫です。それよりゴミ、取ってくれてありがとうございました」
行人はお礼を言うと、置いてある湯飲みに視線を移した。
「あ、お茶、もうないや…ちょっと入れてきますね」
行人の言うように、話し合いをしていたためか湯飲みの中は既に空になっていた。
そして行人は湯飲みを持つと、台所の方に歩いていった。
その様子を見ながら、ちかげは口元に笑みを浮かべた。
(フフフ〜、ついにげっとですの!あとはこれを藁人形に…)
ちかげはそう言って懐に手を入れたが、藁人形はそこにはなかった。
「あ、あら?」
ちかげは全身をまさぐってみたが、藁人形はどこにもなかった。
「ない、ない、ないですの…も、もしかして家に忘れて…」
ちかげは親指の爪を噛み、悔しそうに目を伏せた。
(まさか忘れてしまうなんて…ドジっ娘属性なんてしのぶちゃんとりんちゃんで十分ですのに!)

一方、洋館ではぱな子がちかげの部屋を見ながら怒りの炎を燃やしていた。
その後ろではまーくんがふわふわと浮いていた。
(ちかげさんったら…片付けてくださいって言ったのに…帰ってきたら意地でも片付けさせないと…)
ぱな子はそう言うとちかげの部屋から離れていった。
まーくんもぱな子について行こうとしたが、ちかげの部屋のある物を見ると彼は部屋の中に入っていった。
「んー?なんだろー」
まーくんはそう言ってそれを、藁人形を手に取った。

場所は戻り、ちかげは目を開くと立ち上がった。
(こうしてはいれませんの!こうなれば急用と言って早く家に…)
そしてちかげは歩き出そうとしたが、いきなりお尻に撫でられる感触が伝わってきた。
「ひっ!な、何ですの?」
ちかげは振り向いたがそこには誰もいない。
「き、気のせいかしら…」
しかし今度は胸を撫でられる感触がちかげに伝わってきた。
「ひゃっ!?」
ちかげは咄嗟に正面を向くがもちろんそこには誰もいない。
すると腹をなでられる感触が伝わり、ちかげは身を引いた。
「っ!さ、さっきから何ですの?これ…ひぅっ!?」
今度は背中を撫でられる感触が伝わり、ちかげは体を振るわせた。
「な、何が…ひぁっ!?」
状況を理解できず、戸惑うちかげに全身を撫でられる感触が襲ってくる。
「ひゃっ!?くっ、んっ!」
ちかげは身を捩じらせ、撫でられる感触から逃げようとするが、その感触がなくなる事はなかった。

まーくんは藁人形をなでるように触りながら、それをじっと見ていた。
「おにんぎょさんだー…んぅ?」
まーくんは机の上にある筆に気づくと、それを手に取った。

「はっ、あっ…」
ちかげは肩で息をしながら壁にもたれかかった。
「一体、何が…」
ちかげの頬は少し紅潮しており、息も少し荒かった。
結局撫でられる感触はなくならず、抵抗は何の意味を持たなかった。
何故かその撫で方は絶妙であったが、現在、なでられる感触は消えていた。
ちかげは息を整えようとしたが、今度は秘所に棒に跨るような感触が伝わってきた。
「んっ!?」
ちかげはビクンと体を震わせると、一瞬目を瞑った。
「こ、今度は何ですの?んんっ!」
すると跨っている棒が揺れているかのような感触が秘所に伝わり、ちかげは足を振るわせ始める。
「く、んぅぅ…あぅっ!」
ちかげの吐息にはさらに熱が篭り、彼女の下着には愛液が滲み始めていた。

「ぶーん、ぶーん」
まーくんは筆に跨らせた藁人形を持って遊んでいた。
筆は固定されているわけではないのでぐらぐら揺れていた。
すると筆が藁人形の股からするりと抜け、地面に落ちた。
「あー、おちちゃったー」
まーくんは筆を拾い、再び藁人形をそれに跨らせようとしたが、むず痒そうな表情になりそれをやめる。
「ふぇ、ふぇ…へくちっ!」

「ちかげさん、お待た…せ…」
行人はお茶をお盆に乗せて戻ってきたが、そこには切なそうな表情で壁にもたれかかっているちかげがいた。
「ちかげさん!?どうしたの!?」
行人はお盆を置くと、ちかげに駆け寄った。
「んっ、行人さ…んんんっ!?」
ちかげは突然ビクンと体を震わせ、そのまま倒れそうになる。

「っと!」
行人はちかげの肩に手を回し、彼女を何とか受け止める。
するとちかげがぎゅっと行人の服を掴んできた。
「ち、ちかげさん?大丈夫?」
行人はそう聞くが、ちかげは切なそうに体を震わせて何も答えなかった。
(な、何かが…私の中に…んぁっ!?)

まーくんは困っていた。
くしゃみをした弾みで何故か藁人形の股間に筆が刺さってしまったのである。
「うぅーーーーーん」
まーくんは筆を抜こうとしたが、中で毛が引っかかっているのか中々抜けない。
まーくんは諦めずに筆をぐりぐり動かしながらそれを抜こうとする。

「くぅっ…ん…」
まるで秘所に棒状の物を入れられ、それをぐりぐり動かされているような感触がちかげを未だに襲っていた。
しかも棒の先端はふわふわしているのか、奥の方ではくすぐったい感触が伝わってくる。
「ち、ちかげさん…」
「い、くとさ…んっ!」
ちかげは空いてる手でスカートの裾をぎゅっと掴み、刺激に耐えようとした。
しかし今度は別の物がちかげを襲ってきた。
先ほどお茶を飲んだ事もあってか尿意が襲ってきたのである。
(な、何でこんな時に…)
ちかげは行人の服から手を離して何とか立ち上がり、壁にもたれかかりながら歩き始めた。
「ちかげさん?」
「ちょっ、と…んっ!」
いくら男に対する羞恥心がほとんどないと言っても、目の前で漏らすのは恥ずかしいのかちかげは厠に向かって歩き出す。
ちかげが一歩進むと、スカートの中から愛液がポタポタと滴り落ちてきた。
行人の目にもそれは映り、行人は驚いた表情でちかげを見た。

まーくんは頑張っていた。
一生懸命筆を藁人形から抜こうとしていた。
「う〜ん、う〜ん…えーい!」
まーくんが思いきり引っ張ると、筆はポンと抜けた。
「やったー、ぬけたのれすー!」
まーくんは両手を上げて筆が抜けた事を喜んだ。
(まーくーん、ちょっと手伝ってくださーい!)
「あ、はーい」
まーくんは飽きたのか藁人形を机に置くと、部屋を出てぱな子の声のする方に向かった。

「ちかげさ…ん」
行人は声をかけるが、ちかげはそれに答えずに、厠に行こうとする。
ちかげが一歩進むたびに愛液が垂れていく。
(は、やく…んっ…)
そしてちかげがさらに一歩踏み出した瞬間、いきなり今まで入っていた物が抜ける感触が伝わってきた。
「ひぁっ!」
ちかげはその感触で気が抜けてしまったのか、今まで我慢していた物を解放してしまった。
ちかげの下着に愛液とは違う物が滲み、それは下着では吸収しきれず、床に流れて水溜りを作る。
「あ、はあぁぁぁぁ…」
それは勢いを増し、ピチャピチャと水溜りに流れ落ちていき、水溜りを大きくする。
行人は言葉を失い、それを見続けてしまっていた。
しばらくするとちかげのスカートの中から流れる物の勢いは落ちていき、それは止まった。
するとちかげは壁にもたれかかりながら膝をついてしまった。
(しちゃったですの…よりによって…行人さんの目の前で…)
「う、くっ…うぅ…」
そしてちかげは嗚咽をあげながら泣き出してしまった。
行人は状況をうまく把握出来ず、少しの間動けなかったが、やがてちかげの方に歩いていった。
「ちかげさん…」

行人が声をかけると、ちかげはビクンと肩を震わせる。
行人はそんなちかげの頭に手を置いてしゃがむと、そっと抱きしめた。
「え?」
ちかげは突然の出来事に戸惑いを隠せなかった。
「行人…さん?」
行人はちかげの頭に乗せた手を動かし、彼女の頭を撫で始めた。
しばらくそうしていると、行人はちかげの頭から手を離した。
「落ち着きましたか?」
「あ…はい…あの…」
「何ですか?」
「だ、誰にも言わないでくれますか?」
「うん」
「わ、笑わないでくれますか?」
「もちろんです」
行人はそう言うと微笑みながら再びちかげの頭をなでた。
ちかげはそんな行人の様子を見て、少し頬を膨らませる。
「わ、笑ってますの…」
「え?」
「笑ってますの…笑わないでって言いましたのに…」
「あ、ごめん…」
行人は謝るが、微笑んだままだった。
ちかげは少しの間頬を膨らませていたが、やがてほっとしたように微笑んだ。
行人もそんな様子のちかげを見て、ほっとする。
(とりあえず落ち着いてくれたみたいだけど…な、何でこんな事に…)
行人はちかげの頭から手を離すと、立ち上がった。
「とりあえずすずが帰る前に片付けましょう。何か拭く物を…」
行人はそう言ってちかげから離れようとすると、ちかげが行人の服をぎゅっと掴んだ。
「ちかげさん?」

「まだ…体が熱いんですの…」
「え?」
「しのぶちゃんともした事を…私にして欲しいんですの…」
ちかげは潤んだ瞳で行人を上目遣いで見る。
行人はしばらく固まっていたが、やがて優しくちかげを押し倒した。
「いいの?ちかげさん」
行人に聞かれると、ちかげは視線を逸らし、目を瞑った。
「私、性交を本で知った時、興味がありましたの。どんな物なのか研究したいとも思いました。
 行人さんとしのぶちゃんの性交を観察しようともしました」
ちかげは目を開くと、行人の顔をじっと見た。
「でも…今は研究とか関係なく…行人さんと…したいんですの…」
行人はそれを聞くと、自分のズボンから自身を取り出した。
それはすでに硬く大きくなっており、ちかげは前に見た時と違うそれを見て驚いていた。
(な、何ですの!?あれは…あ、あんなに大きくなるんですか!?)
行人はちかげのスカートをずり上げ、愛液とおしっこでぐしゃぐしゃになった下着を横にずらすと、膣口に自身を当てた。
「行くよ、ちかげさん。力を抜いて…」
行人はそう言ってちかげの頬に手を当てた。
ちかげも少し緊張していたが、行人の手が頬に当たると自然と力が抜けていった。
「はい…」
ちかげの返事を聞くと、行人は自身をちかげの中に挿れていった。
やがて行人のそれは処女膜を破り、奥に進んでいく。
「んっ…くっ…」
ちかげはぎゅっと目を瞑り、破瓜の痛みに耐える。
そして奥まで行人のものが入ると、ちかげは目を開いた。
「奥まで…入りましたの…」
「ちかげさん、大丈夫?」
「大、丈夫ですの…」
ちかげは目に涙を浮かべながらそう答えた。
行人はそんなちかげと唇を重ね、舌を彼女の口内に侵入させる。

「んんっ!?」
ちかげは驚き、目を見開いたが、やがて自分からも舌を絡ませる。
しばらくして行人はちかげから唇を離した。
「大丈夫?」
行人がもう一度聞くと、ちかげはただ黙ってコクンと頷いた。
それを見ると行人は腰を動かし始めた。
するとちかげの口から嬌声が出始める。
「んっ!はっ!あっ!」
行人の腰の動きは速くなっていき、結合部からはグチュグチュと言う音が聞こえてくる。
「ちかげ、さんっ!気持ちいい?」
「は、いっ!行人、さんっ!んんっ!」
やがてちかげも腰を振り始め、二人の動きはさらに激しくなっていく。
「ちかげ、さん、そろそろ…」
「んっ!わ、たしもっ!行人、さんっ!」
「くっ、あぁぁぁぁっ!」
「んんんんっ!」
そして行人は一気に奥まで突き、ちかげの中に欲望を放出する。
ちかげも絶頂を迎え、一瞬大きく体を仰け反らせると、一気に脱力する。
行人も脱力し、ちかげに覆いかぶさるように倒れた。
(行人さん、重くて…温かい…)
ちかげはそっと行人の背中に手を回し、目を閉じた。

行為を終えた後、部屋を片付け、身だしなみを整えた。
ちかげは靴を履き、玄関の戸を開けた。
「それにしても…まさかもうそんなにやってるとは予想出来ませんでしたの」
「う…」
ちかげに言われ、行人は気まずそうに視線を逸らした。
「くないさんやみことちゃんまで…行人さん、結構やりますね」

「うう…」
行人が困っているのを見ていたちかげだが、やがて恥ずかしそうに頬を染める。
「行人さん、その…私が…おも…しちゃった事は…」
「え?ああ、内緒、でしょ」
「は、はい…」
「それにしても…ちかげさん、一体何があったの?いきなりあんな…」
「それが私にも…あ…」
ちかげは朝、起きた時に何かが髪の毛に引っかかった事を思いだした。
「何か心当たりが?」
「え、ええ…あ、あの、今日はありがとうございました。その…いろいろと…気持ち良かったですの」
「あ、いや、別にそんな事は…じ、実は僕も我慢出来なくて…」
行人は照れくさそうに頭をかくと、ちかげに頭を下げた。
「そ、それじゃ、今日はこれで…」
「あ、うん、またね」
そしてちかげは扉を閉め、その場から去っていった。
「あ、そう言えば…すずの勉強嫌いを直す計画、もういいのかな…」

帰り道、ちかげは自分の頭に手を乗せた。
(なるほど、しのぶちゃんの気持ち、少し分かった気がしますの…)
ちかげは目を閉じて自分を抱きしめてくれた時の行人を思いだす。
「……ほ、本気であたっくするのも…悪くないかもしれないですの…」
ちかげはぼそっとそう呟くと、お腹に手を当て、少し幸せそうに微笑んだ。

そして、ちかげは帰った後、ぱな子に部屋の片付けを強要され、その片付けに丸一日を費やした。
また、一応「すずの勉強嫌いを直す計画」は実行された。
しかしその計画を実行した後、すずは三日三晩謎の小言を呟くようになった。
そんなすずの様子を見ていた者は皆「目が死んでいた」と言っていた。