ある日の事、行人が素振りをしていると、オババがそこにやってきた。
「婿殿、ちょっとええか?」
「オババさん?何ですか?」
行人は素振りをやめて、オババの方を向いた。
「こいつを渡そうと思ってな、ほれ」
「え?何ですか?これ」
行人はオババから何やら結構厚い紙束を受け取った。
「お主がやった女子全員に聞いたのじゃ」
「え?」
「将来、婿殿とどんな結婚生活を送りたいのかをな」
「んなぁっ!?」
「安心せい、11人全員にちゃんと聞いておいた」
「いや、そうでなくて」
行人の言葉を無視し、オババは話を続ける。
「お主にとっても将来必要になるじゃろう。予習しとくのも悪くないぞ」
「いや、予習って…」
「なんじゃ?責任取らんのか?」
「……取りますよ。取りますけど…」
「ならしっかりと読んでおくのじゃ…ふむ、11人全員と結婚するとなると祭の計画でも練っておこうかの?」
「気が早いですよ!」
オババはその言葉を聞くと、にやりと口元を歪めた。
「ほう、気が早いと言う事は…まったくその気がないと言うわけではないのじゃな」
「う…」
「ではしっかりと読んでおくんじゃぞ」
オババはそう言うとその場から去っていった。
「……はぁ、何かすごい事になってきたなぁ…でも、男としては皆には幸せになってもらわ…
 いや、僕がちゃんとしないと…」
そして行人はその紙束に書かれている文章を読み始めた。


〜その一・しのぶの場合〜

「師匠〜!夕飯が出来たでござるよ〜」
「ねぇ、しのぶ」
「ぬ?」
「もう夫婦なんだから、師匠ってのは…」
行人がそう言うとしのぶは頬を染めて俯く。
「し、師匠は師匠でござるし、何かむず痒いんでござるよ…」
「う〜ん、じゃあちゃんと呼べたらなでなでしてあげるよ」
それを聞いた途端、しのぶは困ったようにもじもじする。
「そ、それでは…あ、あなた…」
「ん?」
「あ、あなた!夕飯でござる!」
しのぶがそう言うと同時に行人は彼女の頭に手を乗せた。
「よく出来ました」
「ん〜、師匠〜」
すると行人はしのぶの頭から手を離す。
「師匠?」
「そうじゃないでしょ」
「あ、あなた」
「うん」
行人は再びしのぶの頭をなでる。
「さて、じゃあ御飯を食べようか」
「む、拙者がし…あなたに食べさせるでござるよ。だから…」
「…うん、分かった」
「で、では、あ、あなた、あ〜んしてくだされ」
「あ〜ん」
そうしてしのぶはなでなでしてもらいながら、行人に御飯を食べさせた。


〜その二・みちるの場合〜

「ふぇぇ〜ん、行人クーン!」
「どうしたの?みちるさん」
みちるは泣きながら家に入ると真っ先に行人に飛びついた。
「行人クンと結婚もしたのに皆私の名前覚えてくれないんです〜!」
みちるは行人に抱きつき、わんわんと泣く。
行人はみちるの頭をなでながらふと考えた。
「う〜ん、でもそれってそんなに嫌かなぁ?」
「何言ってるんですか!嫌に決まってるじゃないですか!」
みちるは行人から離れると両拳を胸の前に持ってきて行人に抗議する。
「あ、いや…何かみちるさんの名前をちゃんと呼べるのが僕だけって何か特権みたいな感じがしちゃってさ…」
「え?」
行人は気まずそうに頭をかきながら言葉を続けた。
「でもよく考えればあやねもちゃんと呼べるし、やっぱり嫌だよね、名前覚えてもらえないの。ごめん…」
行人はそう言うとみちるに向かって頭を下げた。
「……いえ、謝らないでください。私は行人クンに覚えてもらえるだけで幸せですから…」
死亡、もしくはお別れフラグのような台詞を言いながらみちるは微笑んだ。
行人はそれを聞くと顔を上げ、何か考えているのか顎に手を当てたまま黙り込んだ。
「行人クン?」
「…ねぇ、みちるさん、どうせなら愛称作らない?僕達だけの」
「私達だけの愛称ですか?」
「うん、例えば…『みちる』だから…み、みっちゃんとか?」
行人がそう言うとみちるは満面の笑みでそれに答える。
「わぁ〜!いいですそれ!いいですよ〜!じゃあ『いくと』だから…いっくんですね!いっく〜ん!」
みちるはそう言うと行人に思いきり抱きついた。
「ちょ、みちるさん?」
「みっちゃんですよ、いっくん」


〜その三・梅梅の場合〜

「結局、島に残る事になりマシタネ…」
「うん…」
行人と梅梅は沈む夕日を見つめながらそんな事を口にしていた。
「ねぇ、梅梅、すずから聞いたんだけど、両親に認めてもらって自分の雑技団を持ちたいって夢があるんだって?」
「…はい」
「…この島じゃ叶わないかもしれないんだよ。それでもいいの?」
行人に聞かれると梅梅は沈む夕日から視線を逸らさずに答える。
「…ワタシ、それよりも叶えたい夢、ありマスネ」
「何?」
「…行人サンと立派な家庭作る事デス」
梅梅はそう言うと行人の方を向き、どこか寂しそうに微笑んだ。
「だからワタシは大丈夫デスネ。行人サンと…これからを過ごせるなら…」
梅梅がそう言うと、行人はいきなり立ち上がり、梅梅に向かって頭を下げた。
「い、行人サン?」
「梅梅、僕に…芸を教えてください」
「え?」
梅梅が呆気に取られた表情をしてると、行人は顔を上げた。
「僕と…いや、僕達家族で雑技団を作ろうよ」
「行人サン…でもワタシ、半人前デスヨ…」
「だったら一緒に一人前になろうよ。それでさ、子どもをいっぱい作って雑技団を作ろうよ」
行人はそう言って沈む夕日に視線を向けた。
「それでさ、いつか、この島中のみんなに見てもらおう」
「行人サン…」
「そのためにはさ、まず子ども作らないと…」
「はい!」
感動ぶち壊しの会話をしながら行人と梅梅は家に帰っていった。


〜その四・あやねの場合〜

「行人様〜、朝よ〜」
あやねは行人を起こすため、彼の部屋にやってきた。
「行人様、御飯冷めちゃうから起きて」
「む〜」
あやねは布団の中に潜りこんだ行人を揺する。
「ん〜、じゃあ接吻して」
「へ?」
「朝の挨拶」
「な、なな……う…し、しょうがないわね〜、もう」
あやねはそう言うと、目を瞑りとても嬉しそうに頬を染めながら唇を行人に向けて差し出す。
「ど、どうぞ…」
あやねがそう言うと、行人は布団の中から出てきて、彼女の髪飾りを取った。
あやねの髪ははらりと解け、あやねは目を開く。
「行人様?何を…」
「はい、これ」
行人はそう言うと自分が取った髪飾りとは別の髪飾りをあやねに差し出した。
「これ、僕が作ってみたんだけど…もらってくれるかな?」
「え?……きょ、今日って何かあったっけ?」
「特にはないよ。でも、もらって欲しいんだ。僕の気持ち」
あやねは笑顔でそう言う行人の手から髪飾りを受け取った。
「あ、ありがと…その…んっ!?」
あやねが顔を上げると、行人はすかさず彼女の唇を奪った。
「…さて、朝の挨拶も済んだし、冷めない内に御飯食べないとね」
「は、はい…そうですね…」
その後、行人とあやねは冷めない内に朝ご飯を食べる事が出来た。
あやねの顔の火照りも冷めなかったが。


〜その五・まちの場合〜

「うふふふ、いっぱい取れたわね」
行人とまちは川で魚捕りをした帰り道を歩いていた。
正確にはまちは行人に肩車をしてもらっているので歩いているのは行人だけであったが。
ちなみに捕った魚は式神が運んでいる。
「まちには敵わなかったけどね」
「あら、でも行人様、なかなか上手だったわよ」
「そうかな?」
「ええ」
今回は行人も素手で魚捕りをし、その結果はまちには劣るがそれなりのものだった。
「こうしているとあの時を思いだすわね…あの時は行人様が私の温もりの残ったお洋服を着てたのよね。
 行人様、今回は私の温もりがなくて残念?」
「う〜ん、少しね」
行人は動揺する事もなく、まちの質問に答えた。
「行人様、動揺してくれない。つまんない」
「いや、つまんないって…」
行人はため息を吐くと、視線を上に向けた。
「だって今はもっと直接的に触れ合う事が多いじゃない。今更だよ」
「む〜、そうだけど…」
まちは納得がいかないのか頬を膨らませる。
「今の僕が動揺するとしたら……まちに何かあった時だよ」
「え?」
「まぁ、まちがピンチになる事って滅多にないからね。動揺する事はないだろうね」
「行人様…ふふ、ありがと」
まちはそう言いながらとても幸せそうに笑った。
「ねぇ、行人様、帰ったらお風呂にする?御飯にする?」
「う〜ん、まちにする」
そんな会話をする二人の前に自分達の家である海龍神社が見えてきた。


〜その六・くないの場合〜

「ただいま〜、行人は〜ん!」
帰ってきたくないの腕の中には丸っこくて可愛い鳥がじたばたしていた。
「くないさん、その子は?」
「道中で見つけたんやけどあまりに可愛くて…つい」
「ついじゃないでしょ。離してあげてください」
「え〜、もうちょっと」
「離しなさい」
行人に言われるとくないはしぶしぶ鳥を解放した。
「気をつけるんやで!怪しい奴に攫われんようにな!」
「その怪しい人が目の前にいるんですが…」
くないは行人の方を向くと、頬を膨らませた。
「ちょっとくらいええやんか、うちに一晩泊めさせるくらいは出来るやろ」
「泊めさせる気だったんですか…」
行人は呆れたようにため息を吐いた。
「あのね、あの子にも家族がいるんですから。誘拐なんてしちゃダメですよ」
「せ、せやけど…うぅ、何で行人はんはうちの気持ちを理解してくれへんのやろか…」
くないは大げさによよよと、泣き崩れたふりをする。
「分かりますよ、僕にだって…」
「え〜、嘘や。証拠は?」
「証拠って…僕だって可愛いくてお持ち帰りしたい存在があります。
 でも、その存在は今は僕の家族ですから…その…僕は満足と言うか…」
行人は顔を真っ赤にしながらそう呟く。
くないも言葉の意味を理解し、顔を真っ赤にする。
行人はその状態に耐え切れなくなり、口を開いた。
「だ、大体くないさんは僕じゃ不足してるって言うんですか?」
「そ、そんな事あらへんもん!け、けど行人はんは『可愛い』じゃなくて…か、『かっこええ』やから…」
くないはそう言うのと同時に行人に抱きついた。


〜その七・みことの場合〜

「ただいまぁ〜…」
「みこと、またりんの所に覗きに行ったでしょ」
「何でばれたんや?」
「顔」
みことの左頬には殴られた跡がくっきりと残っていた。
「姉ぇ様の愛のムチ、日に日に強くなっとるな」
「愛はないと思う。と言うか、懲りないよねぇ〜、毎日毎日傷増やして帰って来るんだもん」
行人は苦笑しながら、救急箱を持ってくる。
「ふん、お前も男なら分かるやろ」
「いや、まったく分からないと言うわけではないけど…いい事ではないでしょ」
行人は救急箱を開け、みことの手当てを始める。
「けっ、根性無しが…それがまたええのに…」
「大体、前に無理矢理僕を連れていった時、いざ覗くとなったらいきなり僕の事追い出したのは誰ですか?」
「ぐっ、あ、あれは…ね、姉ぇ様の体はお前にはもったいあらへんからに決まっとるやろ!」
みことは顔を赤くしてそっぽを向こうとする。
「ちょっと、動かないでよ」
「う、うっさいわボケ!これくらいどうって事ない!」
「あるでしょ。あのね、いくらみことが悪くても、奥さんがこんな怪我されたらこっちが心配するんだから…」
「なっ…あ、アホか…べ、別にそんな…だ、大体奥さんって…」
みことは照れくさそうに少し赤く染まった頬を俯いて隠そうとする。
「ちょ、俯かないでよ」
「う、うっさい!」
「……はぁ、僕の愛のムチはみことには必要ないのか…」
「う……し、しゃあないな、い、痛くしたら殴るぞ…」
「はいはい」
行人はみことがなるべく痛くないようにそっと手当てを施した。


〜その八・ちかげの場合〜

「わぁ〜、いっぱい流れ着きましたの!」
ちかげは嬉しそうに浜辺に転がっている物を拾い上げる。
「行人さん!これはなんですか?」
「あ、これはね…」
行人とちかげは浜辺に打ち上げられた物がないか探しに来ていた。
結婚した後、これは二人の日課のようなものになっていた。
「う〜ん、今日はあまり目新しい物がないね」
「そうですね」
「まぁ、ほとんど毎日来てるからね。いつも大量に打ち上げられるかって言ったらそうでもないし…」
「今日はもう帰りますか?」
「そうだね」
そう言うと行人はちかげの手を握る。
「あ……」
ちかげはその手をぎゅっと握り返し、二人は歩き出す。
「それにしてもちかげさんも熱心だよね。昔から全然変わらない」
「ええ、外の世界の事、もっと知りたいですから」
ちかげは眼鏡を光らせながらそうはっきりと言う。
「思えば…僕もこの島に流れ着いて来たんだよね…
 はは、この島に流れ着いたものは皆ちかげさんの家に集まっていくね」
行人は海を見ながら、そんな事を口にする。
「でも、行人さんは物とは決定的に違いますよ。私は行人さんが…命をなくしてしまったら悲しいです」
「…じゃあ、悲しませないよう、僕は一生懸命生きなきゃね」
行人はちかげの手を握る力を少しだけ強くする。
「…行人さん、お昼はカレーでいいですか?」
「うん、ありがと」
「新作のめいど服もお披露目しますね」
「おお、それは実に楽しみだね」


〜その九・りんの場合〜

晴れ渡る空の下、行人とりんは仕事が休みと言う事で散歩をしていた。
「ひ、久しぶりだな、こうやって…その、二人でのんびり過ごすの…」
「そうだね〜、今日は仕事休みだし、みことは実家に戻ってるから本当にのんびり過ごせるね」
行人はそう言ってりんに笑いかける。
それを見てりんも照れくさそうに笑う。
すると行人が何かに気づいたように手をりんの頭に持っていく。
「りん、簪変えたの?」
「え、あ、ああ!その…に、似合ってる?」
「うん、とっても。着物と合っててとても綺麗だよ」
「そ、そっか、ありがと。へへへ…」
りんは頬を染めて口元に手を当ててにやける。
「ダンナ、ちゃんと気づいてくれた…」
「へ?何か言った?」
「あ、いや、何でもない!気にしないで!」
「そ、そう?」
慌てるりんを見ながら、行人は何かを懐かしむように空を見上げた。
「りんは本当に何来ても綺麗だよね。今でも覚えてるよ、花嫁衣裳を着たりんの事」
「え?」
「本当に綺麗でさ。正直僕にはもったいないかな、って思ってたんだ。みことにも言われたよ」
「な、何言ってんだよ!む、むしろ逆だよ、あ、あたいなんかがダンナと結婚なんかしていいのかって思ってさ…」
「え?」
「ダンナだって…晴れ姿、すっごく…お、男前だったぜ」
りんはもじもじしながら行人にそう呟いた。
「…ふふ、りんは綺麗なだけじゃなくて、可愛いよね」
「え、ダン、むっ…」
行人は顔を上げたりんと唇を重ねた。


〜その十・ゆきのの場合〜

草木も眠る丑三つ時、ゆきのは行人を揺すっていた。
「行人〜、起きてよぉ〜」
「う〜ん、今日はもう勘弁してぇ…」
「何言ってんのよ〜、起きてってばぁ」
ゆきのがそうやってしばらく揺すると、行人はだるそうに上体を起こす。
「どうかしたの?」
「おしっこしたくなっちゃって…一緒に来てよぉ」
「一人で行けないの?」
「だって一人じゃ心細いもん」
行人は呆れたような表情をすると、大きく欠伸をし、横になった。
「おやすみ、ゆきの」
「こら、何寝てるのよ!行人は奥さんがおもらししてもいいの?」
「奥さんが一人でおしっこに行けないと言うのもそれはそれでちょっと…」
「うぅ〜、一緒に来てよぉ〜。朝まで我慢できないよぉ」
ゆきのは涙目になって行人を揺する。
すると行人は仕方なさそうに身を起こす。
「分かったよ。一緒に行こう」
「うん!」
ゆきのは嬉しそうに行人と手を繋いで外に出た。
「ねぇ、別に僕じゃなくても良かったんじゃない?」
「くまくま達はダメよ。付き合ってくれないもん。それに…」
そう言ってゆきのは行人の方に顔を向けた。
「行人が一番頼りになるんだもん」
そう言われ、行人は呆気に取られたような表情になったが、すぐにそれは笑顔に変わった。
「それじゃあ、仕方ないよね」
「そ、仕方ないのよ」


〜その十一・すずの場合〜

「行人、どうかな?似合ってる?」
今、行人の目の前には花嫁衣裳を着たすずが立っている。
「…うん、とても…似合ってるよ」
行人は心奪われたかのようにじっとすずを見る。
「本当?良かった〜。これね、お母さんがお式の時に着た衣装なんだって」
「すずのお母さんが?」
「うん、ほら…」
そう言ってすずは行人に写真を見せる。
その写真には花嫁衣裳を着た女性が一人の男性に抱きかかえられている姿が写っていた。
「これがすずのお母さんか…じゃあ、この男の人は…」
「うん、お父さん」
すずはそう言って幸せそうに微笑んだ。
行人はしばらく写真を見た後、それをすずに差し出した。
すずは差し出されたそれを受け取ると、大事そうに見つめた。
すると突然行人はすずを抱きかかえた。
「ひゃっ!」
すずは驚き、写真を落としそうになるが咄嗟にそれを胸に抱く。
「い、行人?」
「皆、待ってるからね。早く行こう」
「う、うん」
すずの返事を聞くと、行人は外に出た。
すると目の前にはある女性が立っており、行人はその人を見ると足を止めた。
「やっぱり、すずをもらってくれる人、ちゃんとやってきたのね」
「え?」
「綺麗よ、すず」
すずが声のする方に顔を向けると、そこには写真の…。








「どうじゃった?婿殿」
日が沈む頃になってオババが再び訪ねてきた。
「ちゃんと読んだかの?」
「え?ああ、読みましたよ…」
行人は紙束を横に置いて縁側に座っていた。
オババはそんな行人の隣に腰をかけた。
「で、どうじゃった?」
「何かいろいろと…すごかったと思います」
「ほう。それで、実現できそうかの?」
「う〜ん、想像つかないですね」
行人は困ったような表情をして腕を組む。
「けど、それが皆の幸せなら…頑張ってみようと思います」
「うむ、そう言うと思っておった」
「え?」
行人が呆気に取られていると、オババは立ち上がり、行人の方に顔を向ける。
「11人の女子の望みを叶えるために努力する…そう言う事じゃな?」
「え、は、はぁ…」
「よし、ではついて来るのじゃ。わしが直接鍛えてやろう。花婿修行じゃ」
「は、花婿修行!?」
「なに、死にはせんよ。それよりちゃんとしておかないと後で大変になるかもしれんからな」
「た、大変な事って…」
「まあ、とにかく来い」
そう言ってオババは行人をどこかに連れていった。

三日後、戻ってきた行人は11人の女子の望みを少しだけ叶えたとかなんとか。