「さて、今日はどれを着てみましょうか…」
ちかげは目の前にある大量の服から今日着る服を選んでいた。
「ん〜、それにしてもだいぶ増えましたね…」
ちかげは一旦服から目を離すと一息つく。
「結構前からいろんな服を作ってきましたけど…こんなにあると何かに使えそうな気も…」
しばらくちかげは考えていたが、やがてある考えが浮かんだ。
「そうですの!これだけ服があるのだからあれが出来るはず!…そうと決まれば…」
ちかげは結局着替えないまま服が置いてある部屋を飛び出した。

それから数日後、行人とすずはちかげに呼ばれて学校に来ていた。
「ちかげさん、いきなり学校に呼び出すなんて…何の用だろ?」
「ま、まさか補習かなぁ…」
「いや、それはないと思うけど…」
「けどちかげの事だからまた変な事じゃねーか?」
「まぁ、ちか姉ぇだしね…」
他の女の子達も呼ばれていて、現在行人達は教室にいた。
ちなみにくないとみこともその中に入っている。
するとちかげが扉を開き、教室の中に入ってきた。
「皆さん、お待たせしました」
「あ、ちかげさん」
「いきなり呼び出すなんて何の用なの?」
「変な事だったら帰るわよ」
巫女姉妹がそう言うと、ちかげは眼鏡をくいっと上げた。
「ふむ、もったいぶっても仕方ありませんので単刀直入に言いましょうか。まーくん!」
ちかげがそう言って指をパチンと鳴らすと、魔人のまーくんが数冊の本を持って教室に入ってきた。
「あい」
「ありがとうですの」
ちかげに礼を言われるとまーくんは教室を出ていった。

「あの、ちかげサン、それは…」
「や、やっぱり勉強なの?」
すずが涙目になっていると、ちかげは本の上に手を置いて眼鏡を光らせる。
「勉強ではありませんの…今ここにいる人達で演劇をやりますの!」
「演劇ぃ?」
「何でそないな事やるんや?」
「理由はこれですの。まーくん!」
「あ〜い」
ちかげが再び指をパチンと鳴らすと、まーくんは今度は何着かの服を持って教室に入ってきた。
「服?」
「ええ、私もずいぶんいろいろな服を作ってきました…ですが服は着なければもったいないですの」
「それで演劇?」
「そうですの」
ちかげがそう言うと何人かは面白そうに服を見始めた。
「へぇ〜、面白そうだな」
「けど服のサイズとかは大丈夫なんデスカ?」
「ええ、それは大丈夫ですの」
「けど演劇をやっても見てくれる人がいなきゃダメなんじゃない?」
行人がそう言うと、ちかげは顎に手を当てる。
「ふむ、そうですね…では、数日後に村人に見せると言うのはどうでしょうか?」
「ええな、そうしよか」
「面倒やなぁ…」
「みことちゃんはやらないんですの?」
「ん〜…まぁ、しゃあないから付き合うたるわ(姉ぇ様がどんな衣装着るのかも気になるしな)」
「では数日後に発表と言う事で…」
ちかげはそう言うと同時に台本を配り始めた。
「とにかくまず台本を読んでみてください。まずどんな話か分からないと演劇も出来ませんし」
配られた台本の表紙には『藍蘭姫』と大きく書かれていた。

「藍蘭姫…もしかしてこの台本ってちかげさんが?」
「ええ、そうですが何か?とにかく読んでみてください」
ちかげがそう答えると、その場にいる全員が微妙そうな顔をする。
(大丈夫なんだろうか…)
そして全員が台本を読み始めた。

藍蘭島と言うある島に一人のお姫様とそのお姫様に仕える7人の小人がいました。
その島には女性しかいなかったが、お姫様と小人達は幸せに暮らしていました。
そんなある日、島に一人の王子様が流されてきました。
意識のなかった王子様は小人に見つけられ、お姫様の接吻によって目を覚ましました。
王子様は脱出を試みましたが、島から脱出出来ない事を知った王子様は島で一生を過ごす事に決めました。
王子様はお姫様と一緒に暮らす事になり、9人は幸せな日々を送っていました。
しかし島に住んでる一人の悪女は王子様を手に入れてくて仕方がありませんでした。
悪女は魔法の鏡に王子様が好きな人は誰かと聞きました。
すると鏡はそれはお姫様と答え、その答えに怒った悪女はお姫様に呪いのりんごを食べさせてそのお姫様を亡き者にしてしまいます。
王子様と小人達はその死を悲しみ、王子様は棺に入れられたお姫様に最後の別れの接吻をしました。
すると呪いが解けお姫様は目を覚まし、王子様と小人達はそれを喜びました。
その後、悪女は懲らしめられ、王子様とお姫様は末永く暮らしました。

これが台本に書かれたいた話の大体の内容だった。
そしてそれを読んだ女性陣は最初のやる気のなかった顔が嘘のように目を輝かせていた。
そんな中、行人は台本を一通り読み終えると、ちかげの方を向く。
「ちかげさん、これってもしかして白雪姫を元にして…」
「ええ、そうですの。それをいろいろいじって藍蘭姫と…」
「なるほどね…しかし王妃じゃなくて悪女なんだ…」
「死乱逝姫…何て素敵な名前…」
「まちサン、字が違いマスネ…」
まちがうっとりして言うと、梅梅がそれにつっこんだ。

しばらくうっとりしていたまちだが、やがて高々と手を上げた。
「私がお姫様やる」
「な、何言ってんだよ姉御!あたいだってお姫様やりてぇよ!」
「あなたも何言ってんのよ!お姫様と言ったらこの私でしょ!」
「あやねはお姫様って言う感じじゃないわよ!やっぱり一番若い私がお姫様を…」
「お子ちゃまだって無理に決まってんでしょ!」
「残念ですが、皆さん、配役はもう決めてますの」
ちかげの一言でその場にいる全員がちかげの方を向く。
「そ、そうなの?」
「ええ」
「まさかあなたがお姫様だなんて言わないわよね?」
「私は監督兼なれーたーですの。では配役を発表しますね」
ちかげがそう言うと、女性陣は緊張した面持ちでちかげを見る。
「まず王子様ですが…行人さん、お願いします」
「はぁ、やっぱりですか…」
「で、お姫様ですが…」
ちかげのその一言でその場に緊張が走る。
「みさ…じゃなくてみちるさん、お願いしますの」
「え、わ、私ですか?」
「ええ、悪女はまちさん、鏡はあやねさん、他は小人役ですの」
発表が終わると、しばらく一同は固まっていたがまちが不満そうにちかげに詰め寄る。
「ちょっとちかげ!何で私がお姫様じゃなくて悪女なのよ!」
「いめーじぴったりですし、呪いと言えばまちさんですから」
「な、なんですってぇ!?」
「まぁ、確かにお姉様ほどの適役はいないわよね」
あやねがそう言うとまちは藁人形を床に叩きつけて剣山をそれに乗せて思い切り踏んだ。
「ごゅっ!ぐぎょっ!」
あやねはそう言うと、意識を手放した。

(やっぱり私の目に狂いはありませんでした)
「そ、それにしたって何でみ…みちるがお姫様なんだ?」
りんがそう聞くとちかげはみちるを見て答えた。
「一応元は白雪姫ですので、白雪姫のいめーじとしては一番いいと思いまして…それに実際の立場が姫みたいなものですから」
「まぁ、確かにオババの直系やからな…」
「私が…お姫様…」
みちるはちらっと行人の方を見ると嬉しそうに微笑んだ。
「さ、それでは早速練習を始めましょう。せっかくなので皆さん衣装に着替えてください」

行人は教室の外で一人着替えをしていた。
女性陣は別に気にしないのだが、行人がそれを拒否したのだ。
ちなみに鼻血よりも理性の方でいろいろ問題があるからである。
そして間もなくして行人は着替え終わった。
「かぼちゃパンツみたいな衣装だったらどうしようと思ったけど…結構普通だな、派手だけど…」
行人が着ている衣装はまるで宝○の人が着るような衣装だった。
「皆は…まだ着替え終わってないのかな?」
行人は女性陣が着替えている教室の方を向く。
「もうちょっと待とう…」
行人はそう言ってその場に体育座りをした。

しばらく体育座りをしていると、教室の方からちかげの声が聞こえてきた。
「行人さーん、着替え終わりましたか?」
「あ、はい、着替え終わりました」
「では教室に入ってきてください。こちらも着替え終わりましたので」
「分かりました」
返事をすると行人は立ち上がり、教室に入った。
するとそこには何やら日本の女子学生の制服と思われるような服を着ているちかげが立っていた。
腕には『超監督』と書かれた腕章をつけている。

「あの、ちかげさん…その服は…」
「はい、監督らしい格好をしようと思ったのでこれを着ましたの…」
(それは違うような気がするが…)
行人はそんな事を考えていたが、部屋がカーテンで仕切られている事に気づいた。
「ちかげさん、何でカーテンが…皆いない所を見るとあっち側に?」
「ええ、ただ衣装を見せるのでは面白くないので、順番に紹介しようと思いまして」
ちかげはそう言うと眼鏡をくいっと上げた。
「では紹介といきましょう…まずはお姫様であるみづ…みちるさんから!」
ちかげの言葉に合わせてカーテンからみちるが飛び出してきた。
結っていた髪は下ろされており、着ている服は真っ白でウェディングドレスのような衣装だった。
ただし、スカートの丈はかなり短かった。
「わ、私は藍蘭島のお姫様のみちるちゃん!な、名前覚えてくれないとお、怒っちゃいますよ!」
そう言ってみちるはぶりっ子ポーズをとった。
行人はどう反応すればいいのか分からず、困っていた
「えっ…と…その…何ですか?」
「決め台詞と決めぽーずです」
(そんなのあるんか…)
行人がため息を吐くと、みちるがもじもじしながら行人に近づいてきた。
「行人クン、あの…どうでしょうか?」
「え?ああ、そうです…ね…」
行人はみちるの方を向くと、固まった。
白いミニスカドレスはみちるにとてもよく似合っており、スカートから伸びる足もとても綺麗だった。
「あの、行人クン?」
「え?あ、うん…と、とても綺麗です。似合ってますよ」
「本当ですか!?」
「はい」
行人に褒められたみちるは嬉しさのあまりに満面の笑顔で回り始めた。
そして行人はもう一つ、みちるを見て頭に浮かんだ事があった。

(髪を下ろしたみちるさん…美咲に結構似てたな…)
「では次!まちさんですの!」
ちかげのその一言で今度はカーテンからまちが出てきた。
行人もそれと同時に考えるのをやめ、まちの方を向いた。
まちもかなりスカートの丈が短いドレスだったが、みちるとは対照的にその色は真っ黒だった。
スカートの中のお尻の部分からは悪魔のような尻尾が出ており、口を開くと八重歯が少し顔を出していた。
「貴方のものは私のもの、私のものは私のもの、私は行人様のもの、ぷりてぃーでびる、あくまちちゃん、見参」
「何か今一瞬おかしな台詞なかった?」
「気のせいよ、それよりどう?行人様、私のこの格好」
まちは尻尾をピコピコ動かしながら行人に近づいてきた。
「うん、可愛いと思うよ。似合ってる」
「あら、嬉しいわ。ふふふ、行人様も素敵よ」
「あ、ありがとう」
(悪魔と言うより…小悪魔だよね…)
まちが頬に手を当てていると、ちかげがまた口を開いた。
「次はあやねさん、かもんですの!」
ちかげの声と同時にあやねがカーテンから飛び出してきた。
あやねの格好は銀色のバニーガールと言った感じで、その衣装はまさに鏡のようだった。
「どんな質問にも本音で答える真実のすーぱーぱーふぇくとがーるみらー!ばにーあやねちゃん!」
(うぅむ、本音と真実って違うような気が…あと兎なのか鏡なのか…)
行人が冷静に考えているとあやねが一気に顔を近づけてくる。
「行人様!どうかしら?可愛い?」
とりあえずきらきらしているので行人にとっては眩しかった。
「か、可愛いし似合ってるよ。あと眩しい」
「まぁ!私が眩しいほど可愛いだなんて!上手なんだから、行人様ったら♪」
そう言いながらあやねは人差し指でつんつんと行人の胸をつつく。
するとまちがあやねの首根っこを掴んだ。
「お、お姉様?」
「あなた、私の部下なんだから私以上に行人様にくっつくの、やめなさい」

そう言ってずるずるとまちはあやねを行人から引き離した。
「まだまだ行きますの、次は小人軍団、藍蘭連者の一人、すずちゃんですの!」
「え?れんじゃ?」
行人が戸惑ってる内にカーテンからすずが飛び出してきた。
すずの衣装はミニスカサンタそのまんまの格好であり、いつも結っている髪は下ろしていた。
「私の豆大福への欲求は最初からくらいまっくすだよ!藍蘭赤!すずにゃん、参上!」
そう言ってすずはビシッと決めポーズをとった。
「ねぇ、ちかげさん、藍蘭連者って?」
「藍蘭姫を守る七人の美少女軍団ですの」
(何かぶっ飛びすぎのような気が…)
「ね、行人、どうかな?」
すずは決めポーズをやめて行人の方にやってきた。
「ああ、かっこいいよ、すず」
「かっこいい…なの?」
「え?…あ、いや、可愛いよ、すず」
行人にそう言われるとすずはにっこりと微笑んだ。
「ありがと、行人!でもちかげちゃん、何で私が赤なの?赤ならりんちゃんの方が…」
「そう言うツッコミは却下ですの、では次、くないさん、かむひあー!」
ちかげが言うのと同時にくないがカーテンの中から素早く飛び出してきた。
くないの衣装は丈がかなり短い青いチャイナドレスで、胸元は大きくはだけ、スリットは腰の上まであり、下着の紐の結び目が見えていた。
「うちの色香に…釣られてみる?藍蘭青、びゅーてぃふるくない、推参」
くないはそう言ってスリットから除く太股を強調するポーズをとる。
(ちょ、これは…いろいろまずい…)
行人はもう鼻血を出さなかったが、その代わりに前かがみになった。
くないはポーズをやめると、胸を強調するように行人の顔を覗き込む。
「どや?行人はん、うちの…色香は…」
「えと、いや、その…」
行人は顔を真っ赤にして目を逸らそうとするが、どうしてもちらちらと妖しい部分を見てしまう。

「ふふ、行人はんはかわええなぁ。その反応だけで十分満足や…あとで釣りじゃなくて本当に…」
くないが言葉を続けようとすると、後からまちに引っ張られ、くないは行人から引き離された。
「ちょっとくない!あなた何行人様を誘惑してるのよ!」
「ああ、まちはん、ちょっとくらいええやん」
「ダメよ!と言うかあなたいつの間に行人様の事…」
「ふふ、秘密や♪」
行人はまちとくないのやり取りを見ながら内心ほっとしていた。
(あ、危なかった…もう少しで理性がぶっ飛ぶ所だった…)
「では次を…へーい!かもーん!しのぶちゃーん!」
ちかげの声と同時にしのぶがカーテンから飛び出してきた。
「拙者のどじに拙者が泣いた!だけどくじけず前を向く!藍蘭金!しのぶでござる!」
「ぶっ!」
行人はしのぶの格好を見て噴き出した。
上半身は胸にさらしを巻いて金の法被を着ており、下半身は何故か廻しと足袋しか身に着けていなかった。
「おお、師匠!どうしたでござるか!?」
「いや、何と言うか…すごい格好だね…」
「むぅ、すごいのでござるか?」
(そりゃもう…ね…)
行人はちらっとちかげの方を向いた。
(ちかげさんって…本当にいろんな服作ってるんだなぁ…)
「ねくすと!みことちゃん!かもん!」
ちかげがそう言うのと同時にみことがカーテンから飛び出してきた。
みことは襟のあるレオタードのような物の上に丈の長い紫のコートを来ており、髪型は何故かツインテールだった。
「乳揉んでもええ?答えは聞かへんけど!藍蘭紫!みこと、ここに登場や!」
みことは決めポーズをとるが、行人は何とも言えない表情でみことを見ていた。
「…他に台詞なかったの?」
「ぐ、うっさいわ!ボケェ!」
みことはそう言って行人を殴り飛ばした。

「ぶっ!」
「べ、別に決め台詞はええやろ…その…ど、どうや?」
「何が?」
行人がそう言うのと同時にみことは再び行人に鉄拳を喰らわせる。
「ぶぐぅっ!」
「聞かんと分からへんのかぁ!?このボケェ!」
行人は鼻血を出しながら顔を上げると、何かを理解したように表情を変えた。
「ああ、うん。よく似合ってるよ」
「ほ、他にはあらへんのか?」
「え、他に?え〜っと…可愛い、と思う」
「…お、お前に褒められてもちっとも嬉しゅうないな…ま、まぁ、お前も多少はええんとちゃうか?」
みことは顔を真っ赤にして、行人に見せないように顔を背けた。
「ははは、どうも」
「はいはい、ごちそうさま、次はりんちゃんですの。さぁ、来てたもれ」
ちかげがそう言って手をパンパンと叩くと、りんがカーテンから出てきた。
りんの格好は緑の巫女服のスカート版と言った感じでニーソックスを履いており、髪型は大きなリボンでポニーテールにしていた。
「さ、最初に言っておく!こう見えてあたいはかーなーり、乙女だ!藍蘭緑、り、りん…」
りんは恥ずかしそうにうつむくと、もじもじしながら上目遣いで行人の方を見る。
「だ、ダンナ…ど、どうかな?」
「うん、すごく…」
「素敵ですわぁ!姉ぇ様!」
行人が感想を言おうとした瞬間、みことが行人を押しのけて先にりんに感想を述べた。
「ちょ、みこと、いきなり出てこないでよ…」
「別にええやろ、男なら細かい事言うなや」
「あ、あのダンナ…その、すごく…何?」
「ああ、すごく可愛いよ、りん」
行人にそう言われた途端、りんは目を輝かせ、笑顔になる。

「ほ、本当か?ダンナ!」
「うん、本当」
「…へへへ、照れるぜ」
りんが頭をポリポリかいていると、みことがりんに向かって飛び出した。
「もう、辛抱たまらん!姉ぇ様〜!」
「うわっ!来んな!」
「やれやれ…」
「まだ終わりませんの、さぁ、梅梅ちゃん!あなたの出番ですの!」
ちかげがそう言うと、梅梅がカーテンから顔を出した。
「あ、あの…ちかげサン…」
「ほら、早く」
「は、はい」
梅梅はそう返事をすると、とことこと出てきた。
梅梅は真っ黒なメイド服を着て、真っ黒なカチューシャをつけ、髪を下ろしていた。
「と、遠野さんをよろしくお願いしマスネ!梅梅胡瓜をドウゾ!藍蘭黒!梅梅デスネ!」
「は、はぁ…」
そう言って梅梅は赤い胡瓜を行人に差し出した。
行人は差し出された赤い胡瓜を受け取ると、それを食べてみた。
「…美味しい…梅の味にこの胡瓜の食感…白いご飯が欲しいくらい美味しいよ!」
「そ、そうデスカ?よ、良かったデス。それであの…行人サン、この服似合っているデショウカ?」
「うん、何と言うか…可愛いと思うよ」
「あ、ありがとうゴザイマス!い、行人サンもかっこいいデスヨ!」
「ありがとう、梅梅」
梅梅は笑顔でそう言うと赤い胡瓜をもう一本差し出した。
「これ、サービスデスネ!」
「あ、ありがとう…ねぇ、梅梅、この胡瓜どうやって…」
「突然変異で出来たんデス」
「と、突然変異…」
「はい!」

梅梅は満面の笑顔で行人に元気良くそう答える。
(……露出だけが魅力じゃないんだよね…)
「さて、次が最後ですが…正直お子ちゃまが最後だと…盛り下がりますの」
ちかげがそう言うとカーテンの向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。
「お子ちゃまって言うなぁ!それと盛り下がるって何よ!」
「はいはい、分かりました。それじゃゆきのちゃん、かむおん」
ちかげがそう言うのと同時にゆきのが勢い良くカーテンから飛び出してきた。
「成長(予定)!満を持す!お子ちゃま扱いする人達!皆頭が高い!藍蘭白!ゆきの!降臨!」
無駄に元気良く決め台詞をいい終えるとゆきのは行人の方を向いた。
「どう!?行人!」
「いや…どうって…」
ゆきのは頭に白鳥のサンバイザーをつけ、白いスク水を来ていた。
「ま、まぁ、可愛いと思うよ」
「ほんと?やったー!」
ゆきのはぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
「ふむ、この本の衣装…幼女にぴったりですの」
ちかげはある本を見てそんな事をつぶやいていた。
全員がお披露目を終え、行人は周りを見てみた。
(何と言うか…この集団は非常にやばい気がする。七人の小人なんてもはや統一感全然ないし…)
「さて、全員終わりましたね」
「ははは、そうですね…はぁ」
「じゃあ練習しましょう。と言うよりせっかくなので一通りのんすとっぷでやりましょう」
「うええっ!?」
全員信じられないといった表情でちかげの方を見る。
「大丈夫ですの、台本は読んでもいいので…」
「いや、大丈夫って…」
「さぁ!それじゃあいきますの!」
そう言ってちかげはどこからか取り出したメガホンを高く掲げた。