さて、それでは演劇を始めましょうか。
「ね、ねぇ、ちかげさん…」
何ですか?行人さん。
「何かいつもと違わない?何か…世界はちかげさんを中心に回ってるみたいな感じが…」
気のせいですの。とにかく、演劇を始めますの。
さて、とりあえず一つ確認しておきます。今回の演劇の接吻しーんは全て顔を近づけるだけ、と言う事でよろしいでしょうか?
「ああ、もちろんだぜ」
「異議なんてあるの?」
「ないわ。そうよね?みちる」
「え、う…は、はい…」
あらあら、やちるさん、ずいぶん残念そうですの…。
ま、そんな事は気にせずそろそろ本当に始めますの。皆さん、準備は?
「いつでも大丈夫でござる!」
「しの姉ぇが言っても説得力皆無やな…」
「とりあえず皆大丈夫みたいやで」
そうですか、では…すたーとですの!

ここは美しい大自然の島、藍蘭島、その島には大変美しいお姫様が住んでいました。
「私は藍蘭島のお姫様のみちるちゃん!名前覚えてくれないと(ry」
お姫様の肌は透き通るように白く、まるで雪のように綺麗なものでした。
そして彼女は護衛のために七人の小人を従えていました。
「私の豆大福への欲求は最初からくらいまっくすだよ!藍蘭あ(ry」
「うちの色香に…釣られてみる?藍蘭青、びゅーて(ry」
「拙者のどじに拙者が泣いた!だけどくじけず前を向(ry」
「乳揉んでもええ?答えは聞かへんけど!藍蘭むら(ry」
「最初に言っておく!こう見えてあたいはかーなーり(ry」
「と、遠野さんをよろしくお願いしマスネ!梅梅きゅ(ry」
「成長(予定)!満を持す!お子ちゃま扱いする人た(ry」

「「「「「「「我ら姫を守る七人の美少女小人軍団!お持ち帰りは禁止!藍蘭連者!」」」」」」」
……ぷっ。あ、笑ってなんかいませんの。ちょっと吹き出しただけですの。
えっと、しかし島には悪女とその手下の魔法の鏡も住んでいました。
「貴方のものは私のもの、私のものは私のもの、私は行人様のも(ry」
「どんな質問にも本音で答える真実のすーぱーぱーふぇ(ry」
その悪女はいつもお姫様の美しさに嫉妬をしており、毎晩五寸釘を藁人形にぶっ刺してました。
「えい」
「え、ちょ、ぐげぇぇぇぇぇぇ!」
しかし毎回呪いにやられているのは何故か部下の魔法の鏡でした。
「ちょ、そんなの台本には載ってなか」
「えい」
「ぎょへぇぇぇぇぇぇ!」
結果的に姫様には何の影響もなかったので皆平和に暮らしていました。
「わ、私は平和じゃないんだけど」

そんなある日、島に一人の王子様が流れてきました。
流された王子様は海岸で倒れてました。
そこに小人の二人、藍蘭金と藍蘭緑がやってきました。
「昨日は嵐で大変でござったな」
「そうだな」
「あ、人が倒れてる」
「お、本当でござるな」
二人は倒れている王子様に駆け寄りました。
「師匠ー、大丈夫でござるかー?」
「ダンナー、しっかりしろー」
ちょ、二人とも、劇中では初対面なのにいきなり普通に呼ばないでください!
「え?あ、悪ぃ…」
「む、気をつけるでござる」

はぁ…二人が呼びかけても王子様は目を覚ましませんでした。
「目を覚まさぬでござるな」
「とりあえず姫様の所に連れて行こうぜ」
そう言うと二人は王子様をお姫様の所まで運ぶ事にしました。

二人が王子様を連れて帰るとお姫様と残りの5人の小人達は驚きの表情を浮かべました。
「しのぶちゃんにりんちゃん、その人は?」
「海岸で倒れていたのでござる」
藍蘭金がそう言うと、お姫様は運ばれてきた王子様に駆け寄りました。
そして王子様の顔を見た瞬間、お姫様の中で何かが芽生えました。
「まぁ、なんて素敵な殿方なんでしょう…」
そう言うとお姫様は無意識の内に王子様の唇に自分の唇を近づけていきました。
「…あの」
どうかしましたか?みちりさん。
「みちるです。やっぱり接吻しちゃ…」
「「「「ダメ」」」」
「うう…」
とりあえず接吻をした事が分かるようにちゅ、と言ってください。
「は、はい……ちゅ」
お姫様が接吻すると王子様は目を覚ましました。
「あ、目を覚ましマシタネ」
「うう…ここは?」
王子様は視線をきょろきょろと彷徨わせました。
「ここは藍蘭島や。あんさん、お名前は?」
「ぼ、僕はソトノセカイ国の王子、行人と言います」
「ええ?王子様だったの?」
「う、うん。あ、貴女達は?」
王子様にそう聞かれると、小人達は名乗り始めました。

「私の豆大福への欲求は最初か(ry」
「うちの色香に…釣られ(ry」
「拙者のどじに拙者が泣(ry」
「乳揉んでもええ?答えは聞(ry」
「最初に言っておく!こう見(ry」
「と、遠野さんをよろしくお願(ry」
「成長(予定)!満を持(ry」
「「「「「「「我ら姫を守る七人の美少女小人軍(ry」」」」」」」
「そして私は藍蘭島のお姫様のみちるちゃ(ry」
王子様は哀れみを含…じゃなくて不思議そうな目でお姫様達の様子を見ていました。
するとちっこい藍蘭白が王子様に質問をしました。
「ちっこい言うな!ったくもう…ねぇ、行人、何で海岸で倒れていたの?」
「修行でござるか?」
「いや、違うから。実は船で旅をしている所を嵐に襲われて…気がついたらここに…」
「嵐…ちゅう事は昨日のあれか…」
「あの、この島に連絡船とかは…」
「ないデスヨ」
「え?」
「この島、周りを物凄い渦が囲んでいて出る事が出来ないの」
藍蘭赤にそう言われると王子様の顔は次第に青ざめていきました。
「それじゃあ僕は…」
「島の外には出れません」
「そ、そんな…」
「まぁまぁ、ここも悪い所やあらへんし…」
「まぁ、死にたいなら止めへんけどな」
「うぅ…」
結局王子様はお姫様と小人達と一緒に暮らす事にしました。
最初は気乗りしなかった王子様も、暮らしていく内に8人ととても仲良くなっていきました。

そして、王子様が流れつき、彼がお姫様と小人達と暮らしている事は悪女の耳にも届きました。
悪女は王子様がどんな人物なのか、手下の鏡と一緒に見に行きました。
「おね…まち様、見つけたわよ」
「そう…どんな殿方なのかしら…」
悪女と鏡は木の陰からひっそりと王子様の姿を覗きました。
すると王子の姿を見た瞬間、悪女の心は撃ち抜かれてしまいました。
「な、何て素敵な殿方なの…結婚したい…」
「確かに素敵な殿方ね…名は行人って言うみたいよ」
「行人…ああ、素敵な名前…行人様…」
悪女は王子様が去ると、魔法の鏡の方を向きました。
「あやね」
「な、何?おね…まち様」
「行人様と結婚するのは誰?」
「それはもちろんこのあやねちゃ…」
悪女は魔法の鏡が全て言い終える前に藁人形に五寸釘をぶっ刺しました。
「ぐげぇぇぇぇっ!」
「私は真実を聞いてるのよ」
「ぐぅぅ…分かったわよ。あー、行人様は姫であるみちると…ぐげぇぇぇぇっ!」
悪女はまた魔法の鏡が全て言い終える前に藁人形に五寸釘をぶっ刺しました。
「あの小娘が行人様と結婚ですって?…許せないわ、フフフフフフ」
さすがまちさん、素晴らしい演技ですの…現実にありそうで怖いですけど。
ま、まあ、ともかく悪女は邪魔なお姫様を始末する準備をするため、魔法の鏡を連れて帰りました。
「ねぇ…藁人形に釘刺すの、するふりじゃダメなの?」

悪女は家に帰ると、早速りんごに呪いをかけました。
「フフフフ…このりんごをあの女に食わせて…そうすれば行人様は…」
ひぃぃっ…あ、悪女は不気味に笑いながら魔法の鏡にりんごを持たせて家を出ました。

悪女は一人で雪原で遊んでるお姫様を発見すると、お姫様に声をかけようとしました。
「み…えっと…」
「みちるよ」
「みちる、ちょっといいかしら?」
「あ、まちさん」
お姫様は悪女に気がつくと遊ぶのをやめました。
「一人?」
「ええ、今日は一人で雪だるま作ってました」
お姫様がそう答えると悪女はにたりと笑いました……本当にまちさんは演技うまいですねー…。
「あの、それで何の用ですか?」
「ああ、実はね、私、心を入れ替えたの。それで貴女達とお友達になりたくて…あやね」
悪女に言われると、魔法の鏡は持ってきたりんごをお姫様に渡しました。
「こ、これは?」
「友情の証のりんごよ。とても美味しいから一口かじってみたら?」
「そ、そうですか?それじゃ…」
お姫様はそう言ってりんごを一口かじりました。
そしてその瞬間、悪女は目を光らせました…って本当に光ったような…
「うっ…」
お姫様はりんごを飲み込むと、とたんに胸を押さえてその場に倒れてしまいました。
「ウフフフフ、やったわ…これで邪魔者は消えた…行人様と結婚するのはこの私よ…」
………………あ、悪女はそう言うと魔法の鏡と共にその場を去っていきました。

お姫様はあの後、王子様と小人達に発見されましたが、既に手遅れでした。
お姫様は氷の棺に入れられ、その周りでは王子様と小人達が悲しんでいました。
「うぅ、姫様…」
「何故姫様が…」
「悲しんでもしょうがあらへん…姫様と最後のお別れや」
王子様は悲しそうな表情でお姫様の頬に手を当てました。

「みちるさん…」
王子様は名残惜しそうにお姫様に顔を近づけ、彼女の口に接吻しました。
「あの…」
あ、ちゅって言ってくれるだけで結構ですの。えっと…みちるさん、頬を膨らませないでください。
「じゃあ…ちゅ」
するとなんとお姫様は目を覚まし、起き上がったのです。
「み、みちるさん」
「姫様…」
「あ、あの、これは…」
「き、奇跡だ…みちるさん、良かった…」
王子様はそう言うとお姫様に抱きつきました。
「あ、行人クン…」
お姫様も王子様の背中に手を回し、彼に抱きつきました。
…まちさん、隣で不機嫌おーら出すの、やめてください。
「わー、良かったねー」
「行人はん、あとでうちにもな」
「拙者はなでなでがいいでござる」
「けっ、鼻の下伸ばしよって…」
「だ、ダンナ、あたいもいいかな?」
「ワ、ワタシも出来れば…」
「あー!私もー!」
小人達もお姫様が甦って大喜びです。
「いや、それは違うような気が…」
(ああ、幸せです〜)

お姫様から事情を聞いた小人達は悪女を懲らしめようと悪女の家に行きました。
「くっ、まさかみ…えっと、みちるが目を覚ますなんて!」
「まち姉ぇー!よくもお姫様に呪いりんごを食べさせたわねー!」
「っ!この声は!?」

「私の豆大(ry」「うちの色(ry」「拙者のど(ry」「乳揉ん(ry」「最初に(ry」「遠野さ(ry」「成長(予(ry」
「「「「「「「我ら姫を守(ry」」」」」」」
「くっ、貴女達…あやね!」
悪女に呼ばれると、魔法の鏡は姿を現し、悪女の前に立った。
「私の盾になりなさい」
「え?」
小人達は次々と攻撃を繰り出していきました。
「うにゃ!行くよ!」
「あやねはん、堪忍な〜」
「いざ尋常に勝負でござる!」
「めんどいけど、しゃあないか」
「悪いな、あやね」
「ゴ、ゴメンナサイネ、あやねお姉様!」
「あやねをやっつけろ〜!」
「ちょ!ま、ぎょおおおおおおおっ!」
魔法の鏡は小人達の総攻撃を受け、その場に倒れました。
「ち、ちかげ…」
どうしました?
「戦うの、演技で良くない?」
…それもそうですね。皆さん、とりあえずそれっぽい事言ってまちさんを攻撃するふりをしてください。
まちさんはその後やられたふりをお願いします。
「「「「「「「それじゃ、攻撃ー」」」」」」」
「あー、やられちゃったー…」
悪女はぱったりと倒れ、小人達は見事勝利を収めました。
「…や、やられる前に言っとけば良かった…ううう…」

悪女を懲らしめた後、王子様とお姫様は結婚する事になりました。
「急展開ですね…」
気にしてはダメですの。

お姫様は王子様に愛の言葉を告げました。
「行人クン、愛してます。これからもずっと…私の命が尽きるまで」
「みちるさん…」
王子様はお姫様に愛の言葉を返しました。
「僕も…みちるさんを愛」
「やっぱりダメだわ!」
ま、まちさん?
「例え演劇でも行人様は渡せないわ!」
「え、ちょ、ちょっとまち!」
「な、お姉様!抜け駆けは許さないわよ!」
「そうやで、まちはん。と言う事でうちも」
「くない先生!?う、あ、あたいだって!」
「り、りん姉ぇ様!?」
「む、ならば拙者も」
「あぅ、う、ワ、ワタシだって…」
「あ〜!私も〜!」
「み、皆、行人クンと結婚するのは私です〜!」
はぁ、仕方ありませんね。王子様はお姫様も悪女も魔法の鏡も小人達とも結婚し、幸せに暮らしました。
「ええ!?結局そうなるんですか!?」
「そ、そんなぁ〜、演劇とは言え行人クンと夫婦になれると思ったのに…」
夫婦には違いありませんの。一夫多妻制ですけど。すずちゃんはどうしますか。
「わ、私?……じゃあ…私も」
「な、すず!?」
決まりですの。せっかくなので私も…。
「いいっ!?」
まぁまぁ、悪いようにはしませんので…。

その後、結局演劇発表の件はうやむやの内になくなったと言う。