「・・ねえねえ、行人様ぁ〜。」
「・・あやね、そのたびにくっつくのやめてもらえる?」
「・・それじゃあ、"でえと"にならないじゃない。
 ・・・こうして、"海辺で腕を組んででえとする"のが行人様のところでは"普通"なんでしょ?」
「・・・誰から聞いたの、それ。」
「・・ちかげだけど?」
「・・やっぱりね。」
苦笑する行人。
ここでは、行人の"一般常識"は通用しない。
なので、当然ながら、彼女たちの認識する"行人の世界の常識"は歪んでいることが多い。
そんな二人の"やり取り"を、遠くで見つめる瞳が・・・・・10こ。
見つめるというより、刺すような視線が殆んどだったが・・・
「・・・何よ、あやねのヤツ〜・・・ニヤニヤしちゃって〜。」
「・・・はん。抜け駆けはさせないぜ。」
「・・・まあ、あやねさんじゃあ"オチ"は見えてますけどね。」
「・・・あやね、あとで"折檻"決定。」
「みんな〜、こんなの良くないよ〜。」
視線の正体・・・それは、すずたちだった。
何故、彼女たちがここにいるかというと、すずがりんについ口を滑らせたことが原因だったりする。
「・・・フ。このままでは済まさないわよ、あやね〜。」
「まあ、あやねにゃ悪いが、行人のダンナと"らぶらぶ"するのは、あたいとって決まってんだからな。」
「フフフ・・・。(悪いですけど、皆さんじゃあ役不足ですわ。)」
「・・・えいやー。」
"グサッ"
と、ワラ人形に釘を打ち込むまち。
その瞬間―――――。
「ぐげぇぇぇっ!!」
突然、苦しみだすあやね。
行人は、それがまちの仕業と即座に気がつく。
「・・・ったく、しょうがないな〜。」
"でえと"もここまでかと思った行人だったが、その後の第二次攻撃が来ないので、不思議そうな顔になる。
「?・・おかしいな〜、絶対まちだと思ったんだけどな。」
いや・・・それより行人、あやねは良いのか。
「ちょっとは私の心配してよー、行人様。」
あ、復活した。
さすがに、早いな〜。
そのころすずたちは、
「だめじゃねーか、あねご。」
「そーよ。今終らせたら、面白くないじゃない。」
「・・・あやねさんには、たーっぷりとプレゼントしてあげないと・・・。」
「・・そうね。こんなに簡単に終らせたら、つまらないわね。」
「・・み、みんな〜。怖いよ〜。」
"フフフフ・・・"と不気味な笑いをする4人に、すずは怯えていた。
海岸を一通り歩いた行人とあやねは、島に住むみんなの家のほうへと歩き出した。
・・・・・それが、あやねにとって行人と楽しむ最後の帰路となるとも知らず・・・。
「行人様〜♪もう少しこのままで〜・・・。」
と、抱きつきながら歩く二人。
大きな大木のあるところまでやってきた。
―――その時、
「行けーっ!かもかも〜♪」
"ドドドドド・・・"と、行人とあや根の方に向かって走ってくるかもかもは、見事行人とあやねの間を縫って、二人を分断する。
「・・・なんだ?ゆきの・・か。」
「・・ったく、これだから"ガキンチョ"は嫌なのよね。」
そう言いながら、あやねは大木にの方へとヨロける。
・・すると、
"ピ―――ン!!"
と、何かが引っ張られるような音が響く。
その瞬間!!

"バイ―――ン!!"
「いや―――――っ!!」
足に"ピン!"と張り詰めたロープがついており、あやねは空へと投げ出される。
「・・な、なんだぁ!?」
何が起きたのか理解する暇もなく、あやねの跳んだほうを見る行人。
「・・・・・・・・・・や――――――――っ!!うごおぅっ!!」
"ズドォン!!"
と、勢いよく地面に激突するあやね。
ピクピクと体が痙攣している。
行人は、"生きている"ことを確認にし、ホッとしたのも束の間・・・、
"ガザッ"
と何かが崩れる音がしたかと思った瞬間!!
"ピュ――――――――――――――――ッ!!"
「いいぃぃぃぃ・・・・・・・や――――――――――っ!!」
と、突然あやねの姿が消え、声が木魂するように聞こえてくる。
それは、落とし穴に落ちていく音と声だった。
"ドコッ!"
と、良い音が響く。
・・・一体、どこまで掘ったんだ・・この穴。
「お、お〜〜〜い!あやね、無事か〜〜〜〜。」
穴を覗き込むように言う行人。
しかし、そんな心配も何のその。
あやねは、物凄い勢いで上ってきていた。
「・・・こんな、ことで〜〜〜負けないんだから〜〜。」
力一杯に言うあやね。
その手が、穴の頂上を掴んだ瞬間!!
「ぐええぇぇぇっ!!!」
手を放し、胸を掻きむしるあやね。
当然の如く、あやねはまた穴の中へと消えていった。
「・・・かわいそーだから、もうやめたらみんな?」
振り返る行人。
そこには、草むらに隠れる"みんな"がいた。
「や、やーっ、ダンナ、奇遇だな?」
「まったくですの〜。おほほほ・・・。」
「やっほ〜・・・」
「・・ア、アハハハ。」
と、それぞれ。
そこにかもかもに乗ったゆきのも帰ってくる。
「・・まったく、も〜〜〜。」
ちょっと怒りながらみんなを見る行人。
「後、ごめんね、行人。止めようとしたんだけど・・・」
「謝ることないわよ、抜け駆けしたあやねが悪いんだから。」
「まあ、これで"懲りた"と思いますわ。」
「・・いや、これくらいで"まいる"あやねじゃないぜ。」
「・・・そうね。殺しても死にそうにない子だモノ・・・。」
と、あやね・・・凄い言われよーだな。
「・・・そんなことより〜、ゆきのと遊ぼうよ〜。」
「ちょいと待ちな、ダンナはあたいと仕事をするんだよ。」
「行人さん〜、ちょっと見てもらいたいものが〜〜^^」
「・・・かくれんぼ。」
「あ〜〜〜みんな、ずるい!!私も行人と〜〜〜。」
・・・と、行人を引っ張り連れて行く5人だった。
・・・・・ちなみに、あやねは。
「・・・ちょっと〜〜・・・待ちなさいよ〜〜〜。私はどうなるの〜〜〜!!!」
その日は、いつまでもあやねの声が穴の中で木魂していたと言う・・・。
・・・めでたし、めでたし。
「どこが、めでたいのよ―――っ!!!