ちづるは組み敷かれ、男に深々と貫かれ喘いでいた。
喘ぎには苦しみや拒絶はなく、寧ろ喜びと甘みが出ていた。
男の突きが強くなれば声をはしたなく張り上げ、深く突かれれば仰け反って快感を現した。
ああ、これ程に悦楽を感じたのは何時振りだろうか?
ああ、男を受け入れる悦びを実感したのは何時振りだろうか?

ちづるは、ふと、顔を上げる。
自分を組み伏せていた男の影が取れ、彼女の目に映ったのは―――。

「夢……」

寝所で目が覚め、ちづるはふぅと息を吐いた。
昨日、あんな話を聞いたからだと思いながら下半身の不愉快感に顔を顰める。
手を入れてみると寝間着の下に履いていた下着がぐっしょりと濡れていた。
夜尿などではない。単純に夢に自分の女の部分が反応してしまっただけの事だ。

(でも、これじゃまるで欲求不満みたい……)

まるで入念な愛撫でも受けたかのように、ちづるの女は愛液に濡れていた。


昨日、ちづるは島の長老であるオババ様の屋敷へと呼び出されていた。
自身の世代で女衆の取り纏め役をしていたちづるは、取り纏め役だけにオババ様との親交が深かった。
何かしらの相談かと思い尋ねてみた所、孫であるみちるの姿が無い。

「みちるにも聞かれたら困る難儀な話だでの。人払いをしたんじゃ」

渋面でそう言ったオババ様は、茶を軽く一啜りし何気ない口調でちづるにこういった。

「無理を承知で頼みたい。行人殿に女を教えてやって欲しい……ぶっちゃけ筆降ろしして欲しいんじゃ」

目が点になったちづるを見てオババ様は嘆息し、もう一口茶を啜る。

「お主が行方知れずの長政殿に操を立てているのは知っておる。だがの……事態が一刻を争うのはお主も承知しているであろう。
 行人殿がこの島に流れ着いて早2年経つが、子供はおろか純潔を散らした娘すらおらん。
 まちとあやねを筆頭に娘達があれやこれやと迫ってみても、行人殿は一向に煮え切らん有様じゃ」

それは娘達の愚痴や内緒話をこっそり聞いていた為、ちづるも知っていた。
そして段々と娘達の行動が強引になり、負の感情すら見え隠れしている事にも気付いていた。
せめて行人が1人でも相手を選んでいればまだ話は違っていただろうが、行人は端から見ていてヤキモキする位女性に対して鈍感だった。

「行人殿に有無言わさず筆降ろし出来るだけの手腕を持ち、他の母親達、娘達を御せるのはお主ぐらいしか居らん。
 別に婿とせよ等とは言わん。ただ、行人殿に女の味を教え、娘達との関係を深めるきっかけを作って欲しいのじゃ。
 お主とてまちやあやねの白無垢姿を早く見たいと零しておったじゃろ。婿にするのも、子を産むのも娘達がやればいい。
 ちづる殿、お主に島の未来がかかっている。頼んだぞ」

それが、昨日の話である。
最長老であるオババ様からの直接命令であるので、否やとは言えなかった。

「私が……あの子を男にするって」

自分の娘達を娶るかもしれない行人に、女が如何なる存在であるかを教える。
娘達が好いている少年と自分が、身体を重ね、男女のまぐわいをする。

「…………ありえないわ」

いい加減濡れた下着が気持ち悪くなったのと、あやねが朝食の呼びかけをしてくるまでちづるは呆然としていた。